TAMABI NEWS 95号(漫画という表現力)|多摩美術大学
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(21年劇場美術デザイン卒)日本テレビグループの総合デザインプロダクション。日本テレビの番組、イベント、映画などにおける美術、照明、テロップ、グラフィックデザイン、WEBなど、デザインに関わるほぼすべてを手掛けている。 日本テレビアートには美術だけではなく、照明、テロップ、グラフィックデザイン、CG制作、校正校閲といった文字校正や音効の部門があり、全部ではないですが日本テレビが主催するイベントのデザインを請け負っています。僕が担当している美術デザイン部は番組のセットのデザインを手掛ける部署で、スタッフの約9割が美大出身者ですが、多摩美卒業生は全体の4割近くにのぼり、まさに今、現場の中心で活躍しているスタッフが多いですね。 多摩美出身者の特徴としては、明るくてノリがよく、コミュニケーション能力に長けている方が多い印象です。演出チームとの打ち合わせの際に明確なビジュアルのイメージや具体的な要望を提示されることは稀で、「明るく楽しい感じで」というようなざっくりしたオーダーを受ける場合がほとんどなので、相手の心を引きつける提案資料を作るための推進力も求められますし、トレンドに対する嗅覚の鋭さも重要になってきます。エンターテインメント系の映像美術ですし、打ち合わせで盛り上がったところからアイデアが出てくることもよくあるので、物事を多角的に捉える目を持ち、会話のキャッチボールを円滑にできる力はとても重要だと感じています。 年に一度の大型番組『Best Artist』や『MUSIC DAY』、レギュラー番組の『MUSIC BLOOD』といった、音楽番組などのセットデザインを担当しています。ディレクターが求める空間と、いらっしゃるゲストにどうマッチするかということを尊重してデザインしていますが、私の仕事は自分だけで完結するものではなくて、照明さんがかっこよくライティングしてくださったり、カメラさんが現場で魅力的に撮ってくださったりして初めてセットが生きるので、そういう一体感を目の当たりにするとやりがいを感じますね。 デザイナーというのは、行き先はわかっていてもその視界がクリアではないときに、横からそっと双眼鏡を差し出すような仕事だと感じるようになりました。より良い双眼鏡を手に入れるためには、音声さんはセットのどこにスピーカーを置くだろう、と想像力を細やかに働かせることも必要ですし、こんな番組があったら面白いな、という妄想力を持つ(13年工芸卒)コンテンツデザインセンター センター長デザイン開発部 部長コンテンツデザインセンター美術デザイン部ことが大切だと思います。 私が学んでいた工芸学科では、自分の作品づくりにおけるプランニングや、どういうコンセプトで作業を進めるかを発表する場を教授たちがつくってくださいました。当時、試行錯誤した経験が現在の仕事にも役立っていますし、尹熙倉先生がおっしゃっていた「自分の言葉をどんな包装紙に包み、どんなリボンで結んで相手に差し出すかが大事」という言葉を今でも折に触れて思い出します。学生のみなさんには、好きなことや興味があることを見つけるだけではなくて、なぜそれに自分の心が揺れたのかを考えてみてほしいと思います。視野を広げ、物事に対する客観的な目を養うためにも、「なぜ」を追求し続けてほしいですね。 今は先輩について研修を受けている最中なのですが、「北海道とイチゴ」をテーマにしたホテルビュッフェのディスプレイや装飾デザインを担当しています。先方から「若い方にデザインしてほしい」とご希望があり、コンペティションに雪と氷をイメージしたデザインを提出したところ、選んでいただきました。 私はもともと音楽を長年やっていて、オペラのオーケストラピットでバイオリンを弾いていたんです。その後自分の適性などを考えて音大を断念しましたが、同じく大好きだった美術と音楽が関わる分野に携わりたいと思い、劇場美術デザインコースに進みました。 劇団扉座の本公演の美術を金井勇一郎先生(演劇舞踊デザイン学科教授)が手掛けられていたご縁で、2年生のときに研究生公演の美術を多摩美生が担当する機会があり、デザインを描いて図面を見せてというプレゼンテーションを経て初めてセットを描かせていただいた経験が糧になっていますね。3、4年生のときには同じくコンペを経て、学科の卒業公演の美術プランナーを担当しました。技術的なことはもちろん、効果的なプレゼン方法を模索し、演出家の要望に沿ってアプローチの形を変えられる柔軟性を身につけられたことは今でも大きな強みになっています。 デザインのみならず、照明や衣装など他のセクションにもひと通り触れる機会に恵まれました。テレビも舞台もすべての要素が重なってやっと成り立つ業界だということを課題を通して知ることができましたし、何より現役で活躍されている先生方から直接指導していただいたことで、より実践的な技術を身につけられたように思います。本記事は連載企画です。さらに詳しい内容や他企業情報はWebでご覧になれます。コンテンツデザインセンター美術デザイン部制作会社12確かな技術と高いコミュニケーション能力でデザインチームの中核を担う多摩美生大竹潤一郎さん浅田一花さん山根茉子さん日本テレビアート企業の人事担当者・卒業生に聞く多摩美への期待と実績

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