TAMABI NEWS 95号(漫画という表現力)|多摩美術大学
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ように雑誌で連載を持っている先輩も身近にいて、本当に刺激的な環境でした。研究会としての主な活動は『タンマ』という同人誌の制作でしたが、芸祭で風呂の道具をそのまま展示したり、合宿を全力で楽しんだりと、漫画に関わらず、とにかく面白いことをしたいという気概に満ちた人ばかりだったのを覚えています。 大学を卒業して企業に就職した後も、漫画研究会の仲間と同人誌をつくることは続けていました。スーツで漫画を描いて、そのまま出社するというようなこともありましたね(笑)。自分たちのやっていることが何よりも面白いのだと信じて疑わない、本当に幸せな時間でした。当時、世の中にはまだ漫画化されていないテーマが山のようにあって、「どこから手をつけよう?」という状態だった。漫画が新しい可能性に溢れていたんです。 さまざまな創作活動を経た僕が実感している漫画の最大の強みは、コストに対して高い漫画部部長 柳亮太朗さん 絵画学科油画専攻3年クリエイティブ領域で 活躍する卒業生たち  漫画部(旧・漫画研究会)は、1976年の発足以来、個性的な漫画家を輩出してきた歴史あるサークルです。部室には何十年も前の漫画雑誌や過去の部誌「タンマ」のアーカイブが置いてあり、当時のおもかげと今日まで続いてきた伝統を感じられます。漫画部を卒業した先輩方の活躍は幅広く、プロの漫画家になった方はもちろん、大手ゲーム会左から:しりあがりさんが所持していた当時の部誌や同人誌、『タンマ』第8号、しりあがりさんが部誌に掲載した当時の作品表現力を持っていることだと思います。アニメや映画を制作するためには膨大な費用がかかるのに対し、漫画では紙とペンだけで同じ世界を表現することができる。当然、それだけトライアンドエラーがしやすく、優れた作品が生まれやすくなります。 また、キャラクターの外見的な特徴から大まかな性格が把握できたりと、長年にわたって集積された“お約束”のような共通認識が多く、読者に情報を伝えるスピードが速いことも漫画という表現ならではの魅力ではないでしょうか。 近年、漫画のレベルは格段に高くなっていると感じています。比例して、影響力も大きくなっている。そんな漫画を描く上で何より大切なのは、作者である自分や身近な人が思わず笑ってしまう作品であるかどうかだと思います。 自分や周囲の人が面白いと思っていない漫画は、おそらく世の中にも響かないでしょう。その点、自分が面白いと思えるものを大事にできる場、また面白さを分かち合社のキャラクターデザインを手がけている方、就職して仕事をしながら表現活動を続けている方までさまざまです。縦の繋がりも強く、先輩やOB・OGの方に相談に乗ってもらうことも多いです。 現在は約50名ほどの学生が所属し、漫画を描いたり読んだり、好きな作品を語り合ったりと各々のペースで活動しています。入部するメンバーは、必ずしも漫画制作の経験者ではありません。部長である僕も、入部して初めて漫画を描きました。部員の多くに共通しているのが、漫画に限らず映画やアニメといったカルチャーに対する「好き」の熱量があることです。 2020年頃からのコロナ禍をきっかけに、部員同士がオンラインでコミュニケーションをとる機会がぐんと増えました。活動の場は時代とともに変化していますが、漫画部として変わらずに力を入れているのが、年2回発行の部誌「タマンガ」の制作です。有志で集まったメンバーの漫画作品を掲載し、コミックマーケットなどの即売会で販売しています。タマンガの制作を通して、部員の漫画作品を初めて読むことも少なくありません。過去には30ページもの原稿をポンと持ち込んできた部員がいて、その熱量と作品のクオリティの高さに度肝を抜かれたこともありました。 普段の活動でも部員が描いた漫画原稿に触発されることは多いですね。漫画という表現は、作者の思いや考え、人やものに向ける視線といった“描いていない時間”が土台となっているように思います。だからこそ漫画作品には、作者の生き様が色濃く反映されるのではないでしょうか。部員同士で切磋琢磨しながら、ときにものすごい熱量や力量で描かれた作品に心動かされる体験ができるのは、漫画部における活動の醍醐味です。える人との出会いの場として、漫画研究会は非常に重要だったと考えています。時代が変わってもその良さは受け継がれていると思うので、またここから新しいものが生まれてくるのではないかと期待しています。1958年、静岡市生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業後、キリンビール株式会社に入社。1985年に『エレキな春』(白泉社)で漫画家デビュー。ギャグ漫画を軸としながら文学的な作品を次々に発表し、アートなど多方面に創作の幅を広げる。2001年に『弥次喜多 in DEEP』(KADOKAWA)が第5回手■治虫文化賞マンガ優秀賞を受賞。喜国雅彦さんの『月光の囁き』(©『月光の囁き』喜国雅彦/小学館)2023年の夏に作られた『タマンガ』50号漫画部部長に聞く部員たちの切磋琢磨から熱量のある作品が生まれる09

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