TAMABI NEWS 96号(問いを立てる力)|多摩美術大学
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08社内でデザインシンキングのワークショップを実施した際のアウトプットイメージ 多摩美の卒業生である母親の影響もあって、自らもクリエイティブな世界に挑戦してみたいと芸術学科に進学しました。当時はアート系のクリエイターがビジネス分野でも活躍し始めた時期で、それに憧れを抱いていたんです。芸術学科であれば幅広くアートについて学ぶことができるので、ビジネスとの接点も増えるのではないかと考えていました。 入学当初は具体的な未来像を描けていなかったのですが、特にプロモーションに関心を寄せていたため、学外でフリーペーパーを制作するなど積極的に活動していました。次第にウェブデザインの仕事をいただけるようになり、ウェブ系のサービスを運営する企業で働きたいという気持ちが強くなっていきました。セプテーニにも学生時代からデザイナーの内定者アルバイトとして参加し、新卒のタイミングで正式に入社。しばらく経験を積んだ後、新設されたマーケティング戦略を考案する部署で責任者を任されることになりました。マーケティングの世界に足を踏み入れて驚いたのは、とにかく論理的なプロセスに従って施策を考えているところでした。課題を分類・整理して、ひとつずつ機械的に解決していく。今となってはその重要性も理解しているのですが、当時の自分には創造性がないように映ってしまったんです。同時に、サービスの魅力を言葉やストーリーによって伝えていくことが、美大で学んできた自分だけの強みになるだろうという直感がありました。 もちろん、ビジネスに関する専門知識は一朝一夕で身につけられるものではありません。ただ、どんな人でも努力して勉強すれば一定のレベルには達することができるはずです。一方、多摩美で養った、視点を変えて新しいアイデアや考え方を生み出す力は、ほかでは得難いものだと感じています。 実際、仕事において多摩美での学びが役立ったこともたくさんあります。とある新サービスの広告に関するコンペティションに参加した際、競合他社はマーケティングの基本に沿って、ターゲット層にとってのメリットを前面に押し出した提案をしていました。しかし、私はもう少し先を見据え、そのサービスが普及すればユーザーの生活はどんな風に変わるのだろうと、新たなライフスタイルのイメージを描きながら提案を行ったんです。サービスの便利さだけではなく、それを使用した人々の気持ちや生活の変化まで伝えた。それがクライアントの共感につながり 発注いただくことができました。Septeni Japan株式会社 デザイン推進室部長ビジネスの世界で実感した美大卒ならではの強みセオリーから外れた独自の提案によって案件を受注個性を活かし問いを深め、差別化する力主観的に考える力を育むことがオリジナリティを持った提案につながる高木皓平 13年芸術学卒業

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