が生まれるようなサードプレイスをつくりたいと、1階には誰でも利用できるカフェを設けました。カフェの外観はガラス張りで、エントランスへと向かう貫通通路が見える仕様になっています。貫通通路は本計画の私有地ではあるのですが、門扉などを設けずに周辺住民も利用できるようにし、施設と街をそのまま接続しました。カフェはその後イベントスペースになりましたが、今も変わらず地域に開かれたコミュニティの場として機能しています。 なんとなく顔見知りができたり、すれ違いざまに挨拶を交わしたりと、緩やかなつながりは安心できる街づくりにもつながります。文筆家で活動家のジェイン・ジェイコブズは、著書『アメリカ大都市の死と生』で、犯罪を上:「HYPERMIX」と街を接続する貫通通路下:仕切りの取り払われたテラスは、住人同士が行き交うコミュニケーションスペースとして機能している「HYPERMIX」(©DAICI ANO)有限会社awn COO/建築家04都市の中で息づく、ランドスケープを意識した建築施設と街を接続して、緩やかなコミュニティを形成 僕はこれまで、主に共同住宅の設計を手がけてきました。なかでも代表的なのが、東京の門前仲町にある複合施設「HYPERMIX」です。前身となるビルのオーナーから「この街に新たな拠点をつくりたい」と相談を受け、二人三脚で設計と運営に携わりました。重視したのは、施設で生まれる収益や付加価値をいかに街に還元するかということです。施設が街にもたらす長期的な影響を見据えつつ、共同住宅、オフィス、飲食店、カラオケ、フィットネスジムなどを併設する複合施設として設計しました。 その街で暮らす人たちがつながるきっかけ街をつなぎ、人をつなぎ、時間や体験までデザインする工藤徹[97年建築科卒業]
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