『ポケモンカード』の作画などで知られるさいとうなおきさん。近年はYouTuberとしても活躍し、自身のノウハウを積極的に発信しています。2021年からNFTアート販売に挑戦。翌年作品が700万で落札されました。05イラストレーター/YouTuber自己の内面ではなく、人に喜ばれる表現と向き合った 小学生の頃、僕が熱中していたゲームのキャラクターデザインを手がけたあきまん(安田朗)さんがテレビに出ているのを見て、ラフな服装で仕事をしているにもかかわらず、多くの人から尊敬されている姿に釘付けになりました。絵の技術で生活できる、「イラストレーター」という魅力的な職業があるのだとそのときに初めて知りました。僕にとって、それが現在の仕事を志した瞬間でした。 大きな転機が訪れたのは、大学1年生のとき。Web上に掲載していた作品を見た方から、人気カードゲームである『デュエル・マスターズ』のイラストを描いてほしいという依頼があったんです。学生からすれば大きな報酬を受け取り、絵を描いて暮らす将来像を明確にイメージし始めるきっかけになりました。 卒業後は企業でゲームの3Dモデリングに携わっていましたが、あるとき、「自分は一生この仕事を続けていくのだろうか?」という疑問が湧きました。その後、イラストレーターとして成功する可能性を閉ざしたくないと退職。フリーランスになると、数珠つなぎのようにイラスト制作の依頼が舞い込みました。『ポケモンカード』の仕事も、僕のキャリアを大きく後押ししてくれたと感じています。 僕がクライアントワークにおいて大切にしているのは、先方の希望に寄り添ったイラストを描くことです。単純なことかもしれませんが、これが意外と評価されるポイントなんです。多摩美では多くの天才が自己表現する様子を見て、商業的なイラストを描く自分との間で葛藤することもありました。ただ、僕の場合は自己の内面を掘り下げたところで、空っぽの自分にたどり着くだけだった。商業的なイラストであれば、求めてくれる企業やユーザーがいます。そして、企業の要望を反映した先に残る自分らしい絵柄を評価してもらうことができる。だからこそ、クライアントワークを手がける際は、先方の思いや作品のコンセプトを尊重し、プレゼントを贈るような気持ちで誠実に取り組んでいます。 一方で、最近は自分の表現と向き合いたいという思いも強くなっています。YouTubeでの発信やオリジナル作品の制作などは、そうした気持ちの表れですね。イラストレーターは、いつ世の中から受け入れられなくなってもおかしくない厳しい仕事。だからこそ、ビジネスの幅を広げておきたいと考えました。 僕にとって最大のモチベーションは、褒められることです(笑)。そのため、多くの人から評価してもらえる商業的なイラストが天職になりました。ただ、絵を続ける動機は人によって異なります。在学中にさまざまな世界に触れ、自分だけの“絵を描く理由”を見つけてください。それがきっと、作品づくりを続けるうえで大きな力になってくれるはずです。1982年、山形県生まれ。大学卒業後、株式会社コナミデジタルエンタテインメントへ入社。退社後、イラストレーター、漫画家として活動を開始。「ポケモンカード公認イラストレーター」としてポケモンカードゲームのキャラクターデザインなどを手がける。また、2019年から開始したYouTuber活動も注目を集めている。左:オリジナル作品『Remember your color of passion』、上・中:NFTプロジェクト「MEGAMI」キャラクターデザイン、下:オリジナルキャラクター「Kちゃん」、右上:著書『7日間で上達! さいとうなおき式お絵描きドリル』(KADOKAWA)、右下:オリジナル作品を手にするさいとうさんNFTで出品したイラストが700万円で落札プレゼントを贈るような気持ちでクライアントワークに取り組むさいとうなおき05年グラフィックデザイン卒業
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