TAMABI NEWS 98号(描くという生き方)|多摩美術大学
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■村深月『傲慢と善良』(朝日新聞出版)装画06多摩美で学んだデザイン視点と“生々しさ”への意識雪下まゆさんは、写実的ながらもデフォルメされた画風が人気のアーティスト。2022年本屋大賞受賞作品の『同志少女よ、敵を撃て』では、装画を担当しました。書籍やCDジャケット、広告などで幅広く活躍しています。 多摩美では、グラフィックデザイン学科に在籍していました。絵が好きで「とにかく絵を描きたい!」と進学したのですが、入学後はすぐに壁に直面しました。周りの学生がみんな知っているようなデザイナーさんを私は全く知らなかったし、授業の意味もよく理解できなくて。自分にデザインは向いてないと思い、油画への転科を考えたこともありました。 でも3年生のときに受けた大貫卓也先生や服部一成先生の授業で、グラフィックの印象が一変しました。それまでは、自分の個性や特徴を出さないデザインを生み出すことがプロだと思っていたんです。でもおふたりの作品には“アーティストらしさ”ともいえる個性が垣間見えて、すごくかっこよかった。こういうデザインがあってもいいんだと、グラフィックの楽しさを教えていただきました。 グラフィックデザインの勉強は今のお仕事にも活かされていて、学んでよかったと思っています。書籍の装画やCDジャケットのイラストでは、絵を描く力だけでなく、デザイン視点で考える力が求められます。目を引く構図を考える、ターゲットないしコンセプトに狙いを定めて描くうえで、当時の学びは非常に役立っています。 また、澤田泰廣先生の授業で今も記憶に残っているのが「目は臓器だ」という言葉です。これを聞いてから、目も生々しさを意識して描いています。そのためか、作品を見た方から、目が印象的だったと言っていただくことも多いです。 制作において変わらず心がけているのは、自然と目を引きつけるような「違和感」ですね。実在しそうでしない人物の違和感、もっと言えば写実的でリアルな描き方とデフォルメ感が、自分の画風だと思っています。違和感の表現という側面では、これまで観てきた映画の影響が大きいかもしれません。私は、映画好きで、高校生の頃からは映画のファンアートを描いていました。なかでも好きなのが、デヴィッド・リンチ監督の作品です。ダークで謎めいた雰囲気や目を釘付けにするような演出に、多くのインスピレーションをもらいました。 またこれは無意識なのですが、今まで描いてきた女の子を見ると、私自身によく似ていることに気づかされます。日常生活では誰よりも自分の顔を見るからこそ、似てきてしまうのかもしれません。 同時に、絵にはそのときどきの自分のマインドや悩みも反映されています。例えば、大学生の頃はパステルカラーを使い、ガーリーで可愛らしい女の子をよく描いていました。これは当時の恋愛の悩みなどが反映されて装画を手がけた、■坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)いたからだと思っています。その後は年齢とともにマインドや悩みが変わるのに合わせて、作画も少しずつ変化していったような気がします。 今のようにより現実的なモチーフを描くに『同志少女よ、敵を撃て』など話題作の装画を多数手がけるいそうでいない、どこか目を引く……大事なのは作品内に潜む違和感アーティスト/ファッションデザイナー雪下まゆ18年グラフィックデザイン卒業

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