(19年日本画卒)11「au」ブランドを中心とした携帯電話事業、固定電話事業、インターネット関連事業などを展開している電気通信事業者。 私は、新規のビジネスのUXリサーチに幅広く取り組んできました。中でも特に関わりが深かったのはauオンラインショップの顧客体験設計です。オンライン上で端末の購入やプラン契約などのサービスを提供し、快適に利用していただくための顧客体験の検討を主に行っていました。UXリサーチからお客様の潜在的なニーズと課題を掘り起こしコンセプトを立て、さまざまな部門と連携してサービスの認知から利用、再利用に至るまでの一連の体験を磨いていきます。ビジュアルデザイン以外のスキルが求められるので、大変だと思うこともありますが、戦略からアウトプットまで一貫して関われることに、とてもやりがいを感じています。 多摩美では、既存の枠にとらわれず、0から新しいコンセプトや価値を創出する思考法を学びました。日本画の課題で静物画のテーマが与えられた場合、まず静物の構造や成り立ちを本で調べ、対象を理解します。その後、スケッチを通して自分の表現したい世界観を構想しながら構図を決め、実際に筆を取って表現していきました。現職でも、UXリサーチを通じて潜在ニーズを分析し、顧客を深く理解した上で、事業と顧客の双方から考えたコンセプトに基づいて、あるべき体験を設計しています。 KDDIは通信事業を軸にしながら、金融やエネルギー、エンタテインメントなどライフデザインに関わるサービスを幅広く手がけています。デザインセンターでは、事業部門や開発部門と連携して、そうしたライフデザインサービスのデザインを担っています。 UXデザイナーは、サービスや事業の企画構想する戦略フェーズから、サービスをつくり上げて市場に出して育てるところまで、チームの一員として関わります。課題を抽出し、みんなで目線をそろえていくためにも、それをロジカルに可視化できるデザインの力は大きいです。ビジネスに興味を持ち、専門領域からはみ出して興味を広げながら、チームでものづくりができる方に、デザインを担っていただきたいと期待しています。パーソナル事業本部 マーケティング本部デザインセンター センター長パーソナル事業本部 マーケティング本部デザインセンター|デザイン2G コアスタッフデータとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進。ITやOT、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じて社会課題の解決に貢献。 日立製作所には家電のイメージを持つ方が多いと思いますが、ITやエネルギー、産業機器、公共交通システムなど、社会全体をサポートする事業に領域を広げています。デザインセンタは、デザイナーだけでなく研究者なども含めたチームで、これらの商品・サービス全般に関わっています。業務の幅が広く、それぞれが複数の案件に関わることも多いので、新たな業務に臆せず取り組むことが求められますが、多摩美の卒業生はそういうマインドセットが上手い印象があります。幅広い分野に触れ、学んできたことがこうした柔軟性につながっているのでしょう。また、伝わりにくい価値や概念などを、絵にしてアウトプットできる力は美大出身者の強みです。柔軟な対応力と画力を持った方々が、デザイン部門で活躍しています。 今まで社内外の多数の案件に取り組んできましたが、現在は行動変容デザインのチームに所属し、社内HR向けのアプリケーション開発にメインで関わっています。さまざまな働き方や特質を持つ従業員について、チームでデータ分析したり、直接インタビューしたりして課題を見つけ出し、その人に応じて適切に行動を促すサポートができるアプリを目指すものです。その効果の検証まで行い、学会発表もさせていただきました。私は多摩美の経験デザイン領域の出身ですが、このように、人の気持ちに寄り添って行動を促せるようにデザインすることは、まさに大学時代に学んできたことでした。 また、地域包括ケアのソリューション開発に関わった際には、介護者向けの情報共有のプラットフォームを構築する上で、根幹となるサービスの将来像をつくることにも参画しました。多摩美では専門以外にも幅広く学ぶことができ、こうした新しい案件やビジョンの考案に携わるとき、そこで得たスキルを活用できていると感じます。特に、ストーリーテリングの授業で、人の話を傾聴する大切さや、人の気持ちをつかむにはどうしたらよいかを学んだことは、コアスキルとして役立っています。(17年大学院情報デザイン修了)本記事は連載企画です。さらに詳しい内容や他企業情報はWebでご覧になれます。研究開発グループ デザインセンタUXデザイン部 リーダ主任デザイナー研究開発グループ デザインセンタストラテジックデザイン部 デザイナーITIT・メーカー多摩美出身者は、ビジネスの最前線からどのような評価を受けているのでしょうか。また、その卒業生たちが学んだ多摩美での4年間は、ビジネスの現場でどう生かされているのでしょうか。さまざまな業界で活躍する企業人たちに尋ねました。専門領域にとどまらず広くビジネスに興味を持ち、デザインの力を発揮してほしい金山由美子さん村端和津さん柔軟な対応力と絵というアウトプット力がチームで創り上げるデザインを支える中島一州さん安村 透さんKDDI日立製作所
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