TAMABI NEWS 99号(エンタメで輝く力)|多摩美術大学
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08 ダンスという身体表現に興味を持ったきっかけは、偶然テレビで観たお芝居でした。中高時代、野田秀樹さん率いる『野田地図(NODA・MAP)』の舞台映像を観たことから、その面白さにどハマりしたんです。その後、野田さんが多摩美の教授をしていること、学生の中からも数名がアンサンブルの一員として舞台『パイパー』に出演していることを知りました。自分も野田さんのもとでお芝居がしたいという一心で多摩美の映像演劇学科に進学し、念願の舞台活動をスタートしました。近藤良平先生と一緒に行った地域連携活動の様子(撮影:湯越慶太) 入学後は実際に野田さんのもとでお芝居に打ち込んでいたのですが、当時の僕は未熟さと熱量の高さから空回りしていたんですよね。稽古などで周囲と衝突してしまう場面もあり、当時のプロデューサーさんから「木皮はプロとして現場に出るには早すぎる」と言われてしまいました。それが決定打になり、2年次以降は役者から身を引くことを決意。そこで改めて自分は、舞台表現のどういうところが面白いと思っているのかもう少し細かく見つめ直してみたんです。そうすると身体で表現することに強い魅力を感じていることに気づきました。同タイミングですが、近藤良平先生の授業も受講していて、ダンスに対するマインドが変わったのは近藤先生のおかげです。近藤先生の授業は、ダンスの固定観念にとらわれず、さまざまなアプローチで身体の可能性に気づかせてもらうものでした。 身体表現を仕事にしたいと決意してからは、ちゃんと時間と労力をかけました。 リサーチのために、舞台公演やダンスのイベントなど年間200ステージ以上は観に行ってました。商業シーンでのエンタメ色の強いダンス、アートシーンでのコンテンポラリーのようにじっくり味わうダンス、コミュニケーションの木皮さんが主宰するダンスカンパニーデペイズマンの舞台作品『#FAFAFA - ファウスト』(撮影:金子愛帆)13年映像演劇卒業場でアーティストの技術が提供されるダンスと、自分の中で仮定していた3つのカテゴリーから、自分の適性や可能性を考え、当初はコンテンポラリーダンスシーンで作品を発表していきました。 大学3年次には、多摩美の糸井幸之介先生が参加する劇団・FUKAIPRODUCE羽衣の作品で初めて振付を考案しました。僕にとって2作目となる『サロメvsヨカナーン』の公演では、観劇してくださった野田さんからも褒め言葉をいただき、これを仕事にしていこうと覚悟が決まりました。公演で振付を見てくださった広告ディレクターとのご縁で、テレビCMの仕事も経験できました。瀧本美織さんが披露するダンスの振付を考案したソニー損保のCMが、初の大仕事になりました。 ダンサーだけでなく振付家として活躍の幅が広がったのは、改めてストリートダンスを習得したこと、そしてカンボジアへの渡航経験が大きいように思います。大学卒業後は、子ども向けダンス教室で働き始めました。というのも、2012年に中学校でダンスの授業が必修になったことで、当時はストリートを中心とするダンス教室のニーズが高まっていたんです。独学による技術力でその流れに追い独学でのスタートから活躍の幅を広げた若手時代CMや演劇作品の振付や、グローバルなダンスパフォーマンスで活躍木皮成KIGAWA Seiダンサー・振付師

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