付属高校から進学し、入学後はデザインサークルを立ち上げ、学内でアートやデザインの展示を行っていました。でも将来のことを考えるようになり、また、選択した芸術批評・哲学のゼミで学問としての美術を学ぶにつれ、もっとこの好きな分野を突き詰めたいと思ったことが編入のきっかけです。研究ではなく自らつくりたかったことと広い可能性を求めて、あえて大学院ではなく3年生への編入を選びました。すでに就職の内定をもらっていた時期だったので、両親には呆れられましたが(笑)。情報芸術コースでは、「まだ誰も見たことがないものを形にし、発信するメディアをつくる」ことを学びました。現在、例えばロゴやWeb、パンフレットなど、あらゆるデザインを通して企業のブランディングや地域の価値を最大限に高める仕事に携わっていますが、どんな企業も魅力はそれぞれですし、何ひとつ同じブランディングの手法はありえませんよね。つまり、多摩美でやってきたことそのままなのです。大学時代、どんな環境で何を学ぶかは、人生の上で大きな岐路となるでしょう。その意味で、多摩美で学べる領域の広さは、決して芸術分野の教養やスキルだけに限ったことではなく、社会のどの領域にも生かせる力やマインドを培える環境であったと思います。 「どうしたらそんな活動ができますか?」と聞かれると、困りますね。僕は常に妄想と衝動の赴くままに、「自分にしかできない面白い空席はどこだ?」と掘り進めていった結果、ここにいる。未知の何かをつくっていくのは刺激的でスパイシーなんです。 僕は、前大学に講師としてみえた久保田晃弘先生(情報デザイン学科教授)の授業に衝撃を受け、楽器づくりから音楽を表現したいと思い、一切迷うことなく編入を決めました。現在は国内外で音楽、美術の制作やパフォーマンスを行っています。古くなった家電製品を新たな楽器として蘇生させ合奏する参加型のプロジェクト『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』に取り組むほか、ISSEY MIYAKEのパリ・コレクションの音楽にも携わってきました。ブラウン管テレビを使って演奏するパフォーマンス作品『Braun Tube Jazz Band』では第13回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞を頂きました。今の活動への直接的な入り口が多摩美です。公開講評会には、キュレーターや業界の方々が見に来られ、そこから美術館でのパフォーマンスやイベントライブの実現へとつながりました。多摩美は、学内に収まらず常に社会とつながっていることも大きな魅力ですね。252004年 入学800年の歴史を持つ寺院のブランドサイトを担当。禅を普及する寺院のブランド価値を高め、外国人参拝者やメディアの支持も獲得した。2006年 入学参加型プロジェクト『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』で、平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣新人賞「メディア芸術」部門を受賞した。株式会社セルインタラクティブ代表取締役田中 茂裕 さん2010年 卒アーティスト/ミュージシャン和田 永 さん2010年 卒※旧・情報芸術コース※旧・情報芸術コースPhoto by Mao Yamamoto大学時代どこで何を学ぶかは、人生の岐路もっと自らつくり、可能性を広げたいよりスパイシーに自分にしかできない空席を探したい法政大学国際文化学部慶應義塾大学総合政策学部情報デザイン学科 メディア芸術コース※情報デザイン学科 メディア芸術コース※学んだ4人の理由
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