多摩美大入試ガイド 2019
18/130

美術学部 絵画学科 油画専攻 デッサン・油彩油画032《教員コメント》手にしたハガキが家に届けられるという簡潔なストーリーと脱力した筆跡。屋根を走る筆の速さに反して、家を覆う紙の処理はとてもデリケートである。人、ポスト、どれもが折り曲げたり、広げられた紙の上に描かれておりこの場にそれらの実体は無く、家の両側に配置された花はティッシュBox?のようなものの蓋だ!発想の瞬発力とまるで絵の中にインスタレーションを見るようなこの作品は、自由で奇妙なオーラを放っていた。一方、デッサンはモデルの表情に作者の誠実さがそっくり乗り移ったかのようだ。肩のラインを幾度も修正した痕跡が窺え、対象を捕えようとする執拗さが好ましい。 (文責=村瀬恭子教授)《教員コメント》この油彩作品が眼に入ったとき、まず絵として、風景としての魅力に強く惹かれた。よく見ると、手前にハガキの一部が描かれ、中央上部には小さくポストが描かれている。見る者は木々へ、水へ、空へと視点を動かしながら、このハガキの行方を想像する。この濃密な画面が発する絵の力、想像する力そのものに心揺さぶられた。デッサンもモデルさんが座っている状況、空気感がうまく捉えられ、緊張感あふれる力強い作品になっていた。あと一息、右足ももの骨格など、見えない部分への興味、捉える力が加わっていくと一層良かった。 (文責=日高理恵子教授)

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る