多摩美大入試ガイド 2019
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美術学部 芸術学科 小論文﹁問題1﹂小論文﹁問題1﹂﹃詩のこころを読む﹄ 茨木のり子という詩人が︑彼女の人生に影響をあたえた詩︑心の琴線に触れた詩を︑茨木のり子の言葉とともにまとめた本だ︒誕生から死までという本の構成は︑私たちの■生■に直接語りかけてくる︒ 私は最後の章で︑素敵な詩と︑茨木のり子の詩への心に出会った︒岸田衿子という詩人の詩である︒ ﹁アランブラ宮の壁の 入りくんだつる草のように 私は迷うことが好きだ 出口からはいって 入口をさがすことも﹂茨城のり子は︑入口と出口を生と死ととらえ︑私たちは旅人であると言葉をそえた︒ 心に響く詩と︑茨木のり子の言葉︒この本は私たちの今日を豊かに︑穏やかにする︒ 井筒俊彦が翻訳した︑﹃老子経﹄について紹介したい︒この本は︑私が哲学に興味を持ち始めた一九歳の頃から読んでいる︒生来私は幼い頃から事物について考えることが好きだった︒大人や同年代の子達が興味を示さないようなとりとめもない事に人一倍興味を持ち︑事の成り立ちについて思索した︒生きるということさえ︑そのテーマとしていた︒ ﹃老子経﹄には世の流れや人生について記述されている︒老子の記述を読む度に共感した︒単なる聖人ではなく︑一人の人間として様々な体験をした老子の姿が読み取れた︒時に事の本質︑人間そのものを見抜く観察眼︑時折冗談めいた語調で失敗談を話す︑彼の﹁遊び﹂というものを感じられた︒何より私は︑彼の思想が現代においても通用する事に驚嘆したのであった︒ 私は夜が好きだ︒昼より少し冷えた空気や静寂に包まれる街︑そして星が輝く夜空︒その全てが美しく思える︒そんな私の心に深く刻み込まれている本がある︒それがサン=テグジュペリの﹃夜間飛行﹄だ︒ ﹃夜間飛行﹄は︑夜に飛行機を使って郵便物を運ぶ飛行士たちとその周囲の人たちの物語だ︒ストーリーも素晴らしいのだが︑何よりも素晴らしいのは﹁夜﹂の表現の仕方だ︒ 物語の中で︑とある飛行士が飛行機のトラブルにより命を落としてしまうシーンがある︒そこで使われる表現が﹁宝石箱に閉じ込められた﹂だ︒満天の星の中で死を待つ彼を︑作者はそう表現した︒これほど美しい表現があるのかと絶句したことを覚えている︒ 私にとって﹃夜間飛行﹄は︑夜の美しさと表現には無限の可能性があると教えてくれた大切な一冊だ︒ ﹃ぼくは誰のために死ぬのだろう?﹄という本がある︒これは絵本であるが︑その内容の重さゆえ︑大人や高年齢向けとして売り出されることが多い︒絵本であるからこそ︑ストレートに意図が伝わってくる本だ︒ 病気をわずらい入院する女の子と︑その病院からすぐの丘にある︑言葉を発さないが意思を持つ木が登場する︒女の子と木は︑一方的ながらも仲を深めていくが︑ある日︑木の立つ丘に新たな病院が出来ることに決まる︒木は当然嫌がるものの︑新しい病院ならば女の子はすぐ治ると知り葛藤する︒最終的に木は切られてしまうが︑その姿を見て号泣する女の子を見て︑ぼくは誰のために死ぬのだろうと自問しながら息絶えたのだ︒ 絵本というと児童向けのイメージが大きいかもしれないが︑この本は︑絵や文字以上の感動を受け取れる︒芸術学087
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