多摩美大入試ガイド 2019
86/130

100■■掲載作品は合格者より選定デザイン(3時間)【問題】ジョバンニは、もう露の降りかかった小さな林のこみちを、どんどんのぼっていきました。まっくらな草や、いろいろな形に見えるやぶのしげみの間を、その小さなみちが、一すじ白く星あかりに照らしだされてあったのです。草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、ある葉は青くすかし出され、ジョバンニは、さっきみんなの持って行った烏瓜のあかりのようだとも思いました。そのまっ黒な、松や楢にがらんと空がひらけて、天の川がしらしらと南から北へ亘っているのが見え、また頂の天気輪の、柱もみわけられたのでした。つりがねそうか野ぎくかの花が、そこらいちめんに、夢の中からでも薫りだしたというように咲き、鳥が一疋、丘の上を鳴き続けながら通って行きました。ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草に投げました。「銀河鉄道の夜」宮沢賢治 青空文庫から ここの文章からイメージした情景を、美しい色彩構成で表現しなさい。【条件】1. B3ボードは横位置で使用すること。2. ボードの中央に、縦300mm×横400mmの長方形を描き、その中3. 記名票は右上に貼り付ける。4. 光を感じる色彩構成とする。●専門試験鉛筆デッサン(3時間)【問題】与えられたモチーフが、空間構成された情景を想定して、鉛筆デッサンしなさい。【条件】1. B3ボード全面を画面とし、横位置で使用する。2. 記名票は右上に貼り付ける。3. モチーフは、光と空間を意識した構成とする。4. モチーフの数を増やすことができる。5. 背景は描かなくてもよい。【注意】1. B4の紙は下書き用紙です。2. 出題の内容に関する質問にはお答えできません。【使用紙】クレセントボード310(B3)の林を越えると、俄に色彩構成しなさい。■■■■■■■■■■■■■■■【注意】1. B4の紙は下書き用紙です。2. 出題の内容に関する質問にはお答えできません。【使用紙】KMKケント(両面)ミューズイラストレーションボードSS(B3)デザイン・理解力 = 問題の把握・理解が適切か・構成力 = 色・かたち・光の表現が調和しているか・伝達力 = 自分のテーマが伝えられているか・感 性 = 言葉をイメージに展開する力があるか・個 性 = 柔軟な発想や個性が感じられるかデザイン「銀河鉄道の夜」宮沢賢治著からの出題です。この作品の一節を読んで、情景を創造し美しく光を感じる色彩構成をデザインする問題です。劇場美術デザインは、「文字」や「ことば」から情景を紡ぎ出していくことです。今年度は、「銀河鉄道の夜」からの出題でした。名作ですが、最近の若者は名前は知っていても読んでいない人も多いのではないでしょうか。普段は聞きなれない、言葉も多く出てきます。日頃から、名作に触れておいてください。書かれている情景を、そのまま表現している回答は評価が低いです。高評価な回答は、個性的な色彩の豊かさ、光と影が美しく調和している、そして人を感動させられる表現であるかです。「発想力」も重要ですが、仕上げの丁寧さ、色彩のバランスも重要な採点ポイントです。今年度も今までに掲載された参考作品と似たデザイン、そして明らかに出題内容からの回答ではない事前に準備してきたような回答もありました。そのような回答は低い採点となりました。オリジナリティを求めます。●採点基準鉛筆デッサン・理解力 = 問題の把握・理解が適切か・表現力 = 光の意識、素材の表現、空間把握ができているか・描写力 = 基本的な表現技術と丁寧な描写力があるか・独創性 = 独自の創造性が感じられるか・感 性 = 魅力ある表現ができているか●出題のねらい・採点ポイント鉛筆デッサン4つの質感の異なるモチーフを、空間構成を行い、情景を想定してデッサンする。この問題は、単に置かれたモチーフを観察し、正確にデッサンするのではありません。自由な構成や構図で独創性と構成力を見ることがねらいです。情景を想定するということは、実空間の形を捉えるだけでなく、ドラマチックな設定を思い浮かべ、心の中の情景を描くことも可能です。ステンレスボールに入ったポップコーン、木製トレイ、ワイングラスの中のLED照明、プラスティックボックスをモチーフとして出題しました。その素材が、描き分けられるか、正確に形がとれているか、魅力ある個性的な創造力と正確な描写力のバランスとれているかが重要です。当学科の出題傾向を参考作品から研究し、大胆な構成を描く創造的なデッサンが増えてきました。しかし、大胆なだけでデッサン力の伴わない回答も多くありました。出題者の意図を読みとり、創造力で挑戦してくる回答を期待します。美術学部演劇舞踊デザイン学科劇場美術デザインコース

元のページ  ../index.html#86

このブックを見る