入試ガイド2020|多摩美術大学
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メディア芸術 美術学部情報デザイン学科メディア芸術コース視覚表現自分たちが小さい頃人形遊びをしたように、自分たちもまた、気づかない間に人形として操られている。そして共存している。《評価コメント》大きくて強いものが小さなものを操って、もてあそんでいるといった社会構造を暗い色調で風刺として表している。重いテーマだが陰鬱さがなく見る者の想像力を喚起させる作品だ。小さな人たちもその状況を知りながら楽しんでいるようにも見える。存在に気づかなかった未明の他者は、同じ姿をしている、いつも隣にいた人物たちという寓話である。批判的なだけではない作者の視点が伺える。自由研究 ~我が家の井戸水~《評価コメント》人間にとって、スケールが違うものはとても認識しづらい。地下の生物は、同じ同僚でありながら、きっとスケールが違う世界に生きているに違いない。この作品は、顕微鏡という知覚のレンズを通してみえる、身近でありながら別の世界をストレートに表現したものだ。輪郭を重視する科学的デッサンとは異なる、透明感溢れる表現が新鮮だ。レンズの収差が描かれていたり、スケールが入っていたりと、ディテールまで気を使って描いているところが良い。自分が大好きな赤色として世の中に存在していたいと思っている私とそっくりな女子高生《評価コメント》数え切れないほど多くの人々が忙しく行き交う交通機関で、同じ赤い服を着ている人と目が合った瞬間が描かれている。向こうのホームまで行って声をかけたりはしないだろうが、言葉を交わさなくても、お互いの過去と未来が、この一瞬でわかってしまったような遭遇である。自分の虚像ードッペルゲンガーのような別の自分との遭遇だ。自分と対でありながら、共に生活をしている鏡に映る自分によく似た彼女。普段見ている「自分」という鏡の中の自分は、本当は違う一人の人物なのかもしれない。《評価コメント》最も身近で、しかし最も気付きにくい同僚、それは自分自身かもしれない。鏡で見ている自分は、本当の自分なのか。だとすれば鏡の中の自分が見る自分も、自分なのか。眼をクローズアップすることで、その色を異なるものとしたことで、そんな無限のパラドックスを感じさせる作品だ。080

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