18[教員コメント]一面に散りばめられたキューブ状のグラデーションに惹かれて目を凝らすと、微かに置かれた色彩が観者の意識を向こう側へと誘導する。あの雪の日の凍える外気と穏やかな室内の温度までもが描かれているようだ。キャンバスのフレームに沿うように窓枠がストイックに配置され、「窓と絵」の関係が複雑に立ち上がり、見る者によってはより深化される。デッサンにおいても熟考された巧みな構図と柔らかさを均等に保った木炭の質感に作者の気質のようなものがうかがえ、膝に置かれた白い手や爪、節の線の表情、これは顔のないポートレイトなのだと思った。 [教員コメント]問題文の「抽象的思考に襲われた」を選択した作者は、正攻法のグリッド絵画で回答した。両脇にハードな暗い正方形を用い、中心に向かって色彩を水色系で明るくし矩形も細めて行った。この効果は、遠近法的な空間を生み、平面的なグリッド絵画だが独特の奥行きを示すことに成功している。極めて高度な抽象絵画である。作者の揺るぎない意思をも感じ取ることができ素晴らしい。デッサンは、実際の観察に基づくよく見る事からは若干ずれた回答だが、独特の不定形の黒い図形を合体させ、単純な描写からの脱却を図っていることが印象深い。顔を隠すアイマスクも視覚に関してのコメントと理解できる。 (文責=村瀬恭子教授)(文責=中村一美教授)
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