21[教員コメント]不思議なアングルである。それはデッサン、油彩ともに言える。油彩は地面からの視点で人が座っている様子を見上げており、人以外は余白にするか極度に省略している。わずかに描かれた梁の表現が画面の大部分の余白を見立てに変え、抽象的な美しい画面を作っている。デッサンも、人の入れ方、クリップ、紐などの作用により、余白を生かした秀逸な画面に仕上げている。しかし気になる点もある。それは問題のどの文章を参照したのかわからないことだ。おそらく画面を決め込んで入試に臨んだのだろうが、そうすることで完成度は高くなるが、問題に対する真■な態度が失われる心配があることに留意してほしい。 [教員コメント]デッサン用紙には波状の線が画面いっぱいに描かれているのだが、その中心に、自身の左手の人差し指を凝視しながら描いている人物が見えるので、その線が指紋なのだとわかる。単純なアイデアであるが、その人物のちんまりとした後ろ姿に、やる気や焦りや緊張が凝縮されているようで、思わず応援したくなる。油彩においては、その描写は気が抜けるほど素朴かつ観念的であるが、■に登場するシカやウサギやムササビなどの動物たちは、キャラクター的かわいさに寄せることなく、個性と愛情をもって描かれており、観る者の心をとらえる。出題の中の「絵画をどこに置くか」という文章にストレートに向き合い、悩みながらも、楽しく充実した気持ちで制作していることが伝わってくる。 (文責=菊地武彦教授)(文責=吉澤美香教授)
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