23[教員コメント]この油彩に描かれた、洗練されているが少し狂気的な空間は、スタンリー·キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』の宇宙船の中を思わせる。ストイックな画面で少ない色数と手数ではあるが、その反面、何を感じてどんな風に手を動かしたかがクリアに伝わってくるのも面白い。デッサンでの身体の扱いも個性的に感じた。この絵を描いた人はきっと人の身体を見る時に同時にその部屋のボリュームも見ているのだろう。椅子の身体、イーゼルの身体、部屋の身体、空調装置の身体などが人の身体と等価値に扱われている感覚も面白いと思った。 [教員コメント]今年の油彩の問題は、様々な短文から一つ選びそれを手がかりに制作するというものだ。これは自由に制作できる反面、自分の中に強くビジュアルイメージがないと難しい問題だ。この作者は角氷が溶けてゆく様子を的確かつ詩的に表現している。的確な描写と詩的な表現は矛盾した要素であるが、それを結びつける力量がうかがわれるよい作品だ。デッサンは衣服のグラデーションなどに油彩に通じる面白さがあるが、手の表情は少々硬い。手ではなく自分の得意な要素で描ききっても良かったと思う。 (文責=千葉正也准教授)(文責=菊地武彦教授)
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