《Perfect 私の好きな作品の一つにラヴェルの『水の戯れ』という作品がある。この作品との出会いは中学生時代の音楽の授業だった。私は一瞬にして、この作品の虜となった。まず、音で聴いているだけであるのに、目の前に鮮明に映像が思い浮かび上がることが、本作の最高の魅力だと感じる。ラヴェルのような近代の印象派による数々の作品はどれも視覚的な美しさまで感じる。しかし、本作のタイトルにも使われている「水」は、不安定ゆえに動きが大きいため、より様々な動きをみることが出来るのではないだろうか。例えば、メロディの上がり下がりで水の跳躍や落下を感じたり、水の大きな流れを低音で表わして水への光の当たり方を高音で表わし、それらを組み合わせ、水を立体的に魅せる。私は以上のような魅力からこの「作品」が好きだ。私の好きな作品は、フェリックス・ゴンザレスにされていたもので、これらは同じ時を共に刻み続ける。トレスのパートナーがエイズと診断されたことをきっかけに生まれたこの作品は、非常にシンプルながらも、だからこそ鑑賞者に時間や人生について深く考えさせる。この作品を知った当時、身内の不幸を経験したことがなかったので、自分と世界を重ねて先に止まる方を自分として見ていた。しかし、先日母が自殺未遂をした。突然のことで、これが時計の針が止まるということ、そしてその危うさなのかと実感した。この経験から、私はこの作品をより現実味をもってみることができる。経験による解釈や語り方の変化を身をもって感じた。Lovers》だ。この作品は、二つの時計が横並びトレスの = 81[教員コメント]既製品の時計を二つ並べただけの作品に込められた作者の意図や感情を、よく理解できています。その作品を知ったのちに自分の身内に起こったショッキングな出来事から、作者の芸術と自分自身の人生を重ね合わせて、いっそう深い作品解釈と思索をなしたことが、よく伝わってきます。[教員コメント]『水の戯れ』というラヴェルの音楽作品が持つ映像的な美しさを力強く論じていて、とても説得力があります。また、他の同じような傾向の音楽作品の中でも特に『水の戯れ』がなぜ魅力的なのかを、自分なりにしっかりと分析・考察している点も、とても良いです。問題1 | あなたの好きな「作品」を一つ選び、350字以内で自由に論じなさい。小論文
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