入試問題集2024|多摩美術大学
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131[教員コメント]親が子供にビスケットを「はんぶんこ」にしているのだろうか。ビスケットを待つ子供の手と、ビスケットを割る力強い大人の手の対比がよく描けていて、ふたりの会話が聞こえてきそうな、物語が想像できる解答を評価した。パリッとした乾いたビスケットの破片や断面も描写のポイントとして捉え、全体的に丁寧な印象を受ける。[教員コメント]袋の中にあるビスケットをつまみ、取り出そうとする日常的な光景である。が、画面を斜めに使った構図は安定感があっていい。光は柔らかく描かれており、温かみが印象に残るが、手の骨格が不正確、かつ質感や描き込みが足りないため両手に脱力感を感じる。ビスケットの袋や文字の描写が丁寧なだけに、もっと描ける力を持つと期待した解答。[教員コメント]ビスケットをパッケージ袋に入れたまま描いた、気を衒わない解答。人差し指はビスケットに直接触れておらず、割れないように優しく持ち上げている様が伝わってくる。空間表現のために周囲に黒を置いたのだろうか、効果的ではなく何を描けば効果的かを判断することは重要。ビスケットは丁寧に描かれているが、手をもっと丁寧に描くと評価アップに繋がった。[教員コメント]地面から手が生え、ビスケットを深い穴へ捨てている、少し不気味な解答である。手の甲から親指にかけての描写に優れていて、手の生々しいハリ感が表現されている。ただ、手と穴の明度に差がないため、若干退屈な表現となってしまった。穴の入口から深淵にかけてさらにコントラストをつけ、より暗く深く描き、袋が浮き立つ様なメリハリがあれば良かった。[教員コメント]手あそびのキツネにも見えるポーズでビスケットをつまんでいるユーモラスなシーン。ライティングが手の後方に設定され、忍び寄りビスケットをこっそりつまみ食いするようにも見える。遊び心があり、他にはないアイデアを構成に取り入れたことを評価した。爪の硬さの表現と、ビスケットから割り取った跡と、手に持つ欠片の大きさが同じだと更に良かった。[教員コメント]ばきっ!!とビスケットが砕ける音が聞こえてきそうだ。モチーフが浮いているのは、重量感ある拳が勢いよくビスケットを砕いたからだろうか。ビスケットと対比して手の固まりや重さが感じられ、魅力的な解答になっている。が、もっと観察して、模様や硬さなどビスケットらしさが描けたり、飛び散る破片を描けると臨場感がアップしただろう。[教員コメント]袋の残骸からビスケットを発掘したようだ。人差し指の長さには違和感を覚えるが、ビスケットを見つけ出した瞬間のドラマチックな場面と構図を評価した。しかし、せっかくスポットライトのような光源を設定したのだから、光による陰影とシャープな光■が描かれていたら、更に評価が高くなっただろう。[教員コメント]空間を大きく使った余裕のある解答。縦構図を活かして、落ちてくるビスケットを受け取る様が表現されている。右手に落ちる影でモチーフの重なりや空間を感じることができる。ビスケット裏面の気泡も描写し、モチーフを真面目に観察し向き合った努力が伺える。手の陰影や皮膚感を更に描ければ、感動的な解答になっただろう。

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