19[教員コメント]真っ白い背中と黒い髪、手前から差し出される手の存在により、観る者は自然と草むらに跪いて見下ろすかたちとなる。口数の少ないこの絵は、サワサワとそよぐ草の流れに対してストンと落ちる髪の毛、若草に縁取られて半身のみ横たわる構図が功を成し、強い余韻を残した。一方、デッサンにおいてモデルの息づく存在感は確かだ。ここでは作者の見る力が誠実に描き残され、例えばシャツとその背景の関係が美しくせめぎ合って、退屈な壁にはデリケートな施しがされており、小さな勇気が辛抱強くコントロールされとても魅力的だ。 [教員コメント]デッサン、油彩とも確実な描写力に裏打ちされた作品である。油彩はガラスによる像のゆがみや光の反射が画面にアクセントを加えて、淡い光に包まれた美しい作品に仕上がっている。デッサンも的確で、木炭による濃淡の幅や質感が美しく、モノクロームなのに色彩を感じさせる良作だ。しかし物足りなさもある。油彩の問題に対してもう少し深掘りしてもよかった。「入れもの」といわれたときに物理的な容器以外にもいろいろ考えられたはずだ。おそらくそのイマジネーションの広がりが今後の作者の制作に役立つと思う。 (文責=村瀬恭子教授)(文責=菊地武彦教授)
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