22[教員コメント]窓によじ登ったり、向こうからこちらを見たりしている子供たちが描かれている。よく見ると、曇りガラスの向こうには勢いよく走っている子供もいる。「入れもの」を、「窓」として考えようとしていることが明快だ。窓が光や風を通すものなら、この絵の前に立つ自分たちは室内という「入れもの」にいることになるだろう。子供たちの行き来はそうした光や風のメタファーなのだが、その表情は楽しく決して説明には終わっていない。デッサンも、対象であるモデルが維持する体の力のポイントや、その場の空気感がしっかり描かれている。 [教員コメント]デッサンも油彩も、細部をくまなく見る繊細な観察と、見えるものすべてをありのままに描こうとする正直な描写が魅力的だった。デッサンは、服のシワや背後の壁の質感が非常に緻密に観察されており、丁寧な木炭の扱いによってそれらの細部が破綻なく描写されている。油彩作品は、試験中に最も身近にある入れものである絵皿がモチーフとなっている。皿や床に蓄積した汚れや、描画オイルに映る光と影が非常に丁寧に描かれている。作者は皿を描くというよりも、皿を通して人の気配や光の揺らぎ、時間の流れを描こうとしているように思う。作者が静かにじっと皿を見つめた時間を追体験できる心地よい絵である。 (文責=石田尚志教授)(文責=日野之彦教授)
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