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第4回東京国際ミニプリント・トリエンナーレ2005は大学創立70周年記念事業の一環として、第1回から第3回展の全ての入選作家789名を招待すると共に審査員が推薦する作家も加えたコンクール形式で開催しました。応募作品の大きさに25×20cm以内という制限を設けたのは、作品を通常の郵便物として、世界のどこからでも安全に、しかも版画表現の質を損ねずに送ってもらうことのできるいちばん合理的なサイズだと判断したからです。経済的な配慮だけではなく、むしろそれ以上に、文化交流のあり方について積極的な考えが働いていました。
1995年に開催された、第1回展は、約1,800人3500点の応募者があり、当初の期待を大きく上回る結果となりました。
1998年に開催された第2回展には世界86ヶ国・地域から約2300名4300点以上もの応募がよせられる大きな反響がありました。技法的にはやはり銅版画が多くみられましたが、その他にも、木版画やリトグラフ、またモノタイプやデジタルプリントなど様々な新しい表現も増えてきました。またコラージュを取り入れた作品もありました。
第3回展からはインターネットを使った公募により、さまざまな芸術表現で活躍する作家たちの参加をうながし、国やジャンルの垣根を越えて、世界の版画を紹介する機会と場を、提供できるようになりました。出品国数81ヶ国と地域から、約2000人3600点以上の作品が寄せられました。本校に新設されたメディアセンターとの協力により作品と情報のデジタル化をすることで、カタログのCD-ROM制作及びインターネットでの作品の閲覧が可能になりました。
本展では、第1回展の審査員でありながら急逝された版画家、池田満寿夫氏と、多摩美術大学の版画教育に大きく貢献された、駒井哲朗氏を記念して、両名の名前を冠した賞が設けられています。
また第1回展から第3回展を通じて作家から寄贈された版画をチャリティー販売しました。その収益金を阪神・淡路大地災で被災した、文化財の修復援助や、私費留学生への奨学金として、国内外の文化の育成に還元してまいりました。
今回開催された第4回東京国際ミニプリント・トリエンナーレ2005は過去の入選者を中心とした招待制としたことで、出品作の水準はかなり高いものになりました。多くの作家たちは、カンヴァスや壁画に立ち向かうほどの豊かな発想がこの小さな紙片に盛り込まれていて、感動的でした。賞の選定では審査員の票が分かれ、何度も投票を繰り返すことになりましたが、それだけやり甲斐のある審査であったともいえます。
大賞を受賞したスロヴァキアのカタリナさんが描いた、デンマークの作家、アンデルセンの生誕200年をモチーフとした作品は、濃厚なファンタジーを宿したイメージが、細密に描写されています。あるいは特定の物語の一場面なのかもしれませんが、見る側にとっては遠い時代、エキゾチックな土地への思いをはせる、謎に満ちた光景です。小さい画面でありながら、空間としての豊かさを感じさせる作品となっています。
東京国際ミニプリント・トリエンナーレが、一美術大学が主催する事業としての利点を生かして、作品本位、芸術家、個人主体の、純粋さを貫くことができたことを、私たちは率直に喜びたいと思います。 世紀を越えて世界の版画表現を俯瞰できる、約7000点がコレクションされました。そのうちの約3700点が現在閲覧できるようになっています。
本展覧会では第1回?第4回の全作品を総カタログとして再編集し、また新しい試みとしてWEB上で閲覧できる作家データベースの開設をしました。これにより、<世界のどこからでも郵送によって、誰でも自由に参加できる>展覧会が、<世界のどこからでもインターネットにより、誰でも自由に鑑賞できる>展覧会へ大きく動きだしました。