祝福

杉山 双葉

作者によるコメント

琴線に触れることとその純粋な喜びの視覚化を試みている。自分の考えは不確かで脆いと感じる。感覚的にできていたはずのことを疑い、知っていることは何か、ということを生活の中のあらゆる場面で意識してしまう。だからこそ私の表現は、揺らぐ中にもあってほしいものが確かに存在していることを確認する行為である。作品は、一つ一つのピースの集積である。ピースはそれぞれ独立した作品だが、配置することによって関係性が生まれる。その集積として空間を作り上げ、それらが存在しているということが重要であるから、その空間自体も作品と捉えた。そしてそれは世界と繋がっていけるという希望になっているように思う。

担当教員によるコメント

杉山双葉の作品はオブジェによるインスタレーションで、普段なら見過ごしてしまうであろう多種多様な日常の断片で構成されている。私たちの日常は大きな意味、目的という「全体」に向かい、日々の些細な「部分」を切り捨てていくが、彼女の問題意識は、その「部分」たちをいかに救い上げるかにある。つまり一般的な表現は1つのテーマ、意味に求心的に向かうが、彼女の表現はそれを回避しようとする。そして彼女は「部分」たちを散漫さのままで提示しながら、それらを新たな関係性のもとで繋げようとするのだ。しかし決して強い関係性ではなく、弱い繋がりのもとで発生する関係性である。そうした関係性を発生させるための身体的で、触覚的な場をどのように構築できるかが彼女の表現となるのだ。彼女の世界に対する慎ましやかさは、視覚的なインパクトが求められるマーケティング的な流行と区別されながら、今日の時代精神の一端を確実に反映しているとして評価したい。

教授・大島 成己