日々

田代 風夏

作者によるコメント

日々同じように過ごす中で、家の周りや道に生えている植物は毎日少しずつ変化している。その変化に気づいた時、私の全てが柔らかくあたたかい気持ちで満たされる。そして余裕をもって一日を過ごすことができるように感じる。この作品では、私が見た植物やその周りを取り巻く環境を色や形に置き換え表現した。この作品を見た人が、今までの記憶や体験を思い出し穏やかな気持ちになってもらいたい。

担当教員によるコメント

日々うつりかわる植物の姿に心惹かれる田代さんは身近な草木の変化を観察し声を聞き、その様子を色や形に置き換え布にのせて制作することを卒業制作のテーマとした。日常の景色から想像力が刺激され現れた詩的心象風景を心理的キュビスムともいえる方法により堂々たる作品を完成させている。画面構成からは近代絵画の先達への関心と敬意が認められるが、染色表現固有の線描と発色が他に例を見ない独自のスタイルを確立させている。特に青という色名が示す無限の領域を自由自在に行き来してモノクロームを超える青による色彩表現を成し遂げたことは作品に強い魅力と存在感を与えている。寒い中、廊下の床に布を広げ、画面と静かに向き合う田代さんの姿が完成作品の向こう側に浮かんでくる。

教授・柏木 弘