still alive

山田 瑠菜

作者によるコメント

文明の発達により何でも手に入れることができる現代社会だが、実は一番求められているのは少女の姿に象徴される無垢な健康ではないだろうか。お金を出しても叶わないが、それがサプリメントや薬に支えられているとしたら。そんな薬の光と影を、少女の絵と薬のシートを用いて表現した。
一見この作品はキラキラとした薬のシートの美しさに目を奪われるだろう。しかしそこには、かつて大量の薬が存在していた残骸も垣間見える。ただ美しいと感じるか、同時に恐怖も覚えるか。それは、鑑賞者の人生に薬がどのようにして関わってきたかによって変化するだろう。

担当教員によるコメント

PTP(press through pack)包装シートとは、錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだシート状のもので、われわれは日常的に馴染んだものである。作者は薬を取り出した後の包装シートを使い分けて、ポップでキュートな女の子のレリーフ像をつくりだした。楽しげにやさしく微笑む少女の姿と病理の象徴である薬物との二面性が、現代社会を暗喩するものだという。しかし、実際の作品の少女の微笑は暗鬱な様子を見せない。あたかもサプリメント化したような過剰な薬漬けの日常によって、高度医療によるクリアな社会が実現し、精神的な病理性は表面から見えにくくなっているのかもしれない。健常と病理の皮肉な二面性を浮き彫りにするのは、少女像の傍らに掲示されている薬効を示したリスト表である。

教授・森脇 裕之

  • 作品名
    still alive
  • 作家名
    山田 瑠菜
  • 作品情報
    立体
    技法・素材:Procreate、PTP包装シート、スチレンボード、半光沢紙
    サイズ:H1189×W841×D100mm(3点)
  • 学科・専攻・コース