母手帳

梅木 千夏

作者によるコメント

母になるまでの過程で生じた複雑な感情を絵、文字、素材(紙や布など)で表現し、1冊にまとめた作品です。母になるまでには、妊娠出産という身体に大きな負担がかかります。それに伴い、感情にも大きな変化があると考えました。
本作品では、妊娠出産を終えた方にインタビューを行い、回答していただいた際に話されていた気持ちや感情を、絵の具を使い表現していただきました。そのインタビューと絵をもとに、本という媒体へと編集しています。本からはみ出るようにして見える絵は、実際に描いてもらったものです。それらの重なりから見えるものや、3冊を比べてみえてくる複雑な感情の差異などを視覚、触覚で感じてもらえると思います。

担当教員によるコメント

母になるとはどんなことなのだろうという、作者の思いが結実したとても優れた作品です。お母さん3人に丁寧にインタビューをして、その想いや考えを聴くことで見えてきた世界を一頁ごとに違う表現で手製本のインタビュー冊子にまとめています。この冊子は、お母さん達の声や様子を表現しようと、さまざまな工夫が凝らしてあり、布地に刺繍で文字が書かれていたり、黒色の用紙に黒のUVインクで凸凹に刷られていたりで、頁をめくるたびに驚いたり目を凝らしてじっくり読んだりとさまざまな行為をしながら読み進むことになります。その行為をさせてしまうのは、テーマの良さに加えて登場する母の魅力と素朴な語り凄さです。読後に、多くの人が母の声に耳を傾けたいと思うはずです。

准教授・矢野 英樹