記憶と愛着の非発話伝達
豊田 桃子
作者によるコメント
日常に追われる中で、過ぎたことを思い返し、友人や家族と会話してそれを共有していると、温かい気持ちになったり、激しく感情を揺さぶられる出来事に再会したりします。パーソナルな話題を誰かと話すのは楽しい時間ですが、私にとってそのような他愛のない話はある程度気心の知れた間柄でこそリラックスして話せる話題だと感じています。
この作品は、「家庭」「故郷」「母校」「東京 」の四つの場所を舞台に、親しい人とだけ話すような個人的な出来事を回想・記録すること、またそれらに付随している言語化できない情報を抽象的に表現したグラフィックとレコードです。音・視覚表現・詩の3つが私自身に変わって、記憶と愛着を伝達します。
担当教員によるコメント
思い出は個々人のものであり、共有することは難しい。しかし、過去の美術や文学においてそれを成し得た作品は少なからずある。大学進学によって家族や故郷と離れ、時間がたつにつれ東京も思い出となる。作者は、そういった自己の記憶に対する愛惜を背景に、自分を育ててくれた地域や家庭、美術を学んだ母校、そしてその後に暮らした東京の日々の音たちをフィールドレコーディングし、レコードの盤面に刻み、それをヴィジュアル表現に展開して、詩作にまで拡げた。愛する人や場所、それが過去のものであるのならなおさら、それらを語ることは気恥ずかしい。しかし、それを抽象化することによって表現にまで高めた力量は、高く評価されるものだ。インスタレーションまで考え抜かれた秀作である。
教授・永原 康史
- 作品名記憶と愛着の非発話伝達
- 作家名豊田 桃子
- 作品情報インスタレーション
技法・素材:木材、紙、レコードプレーヤー、レコード、糸、Illustrator、Photoshop、Procreate
サイズ:H1700×W2800×D1000mm - 学科・専攻・コース
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