あらゆる存在との共生をめざして
神内 隆伍
作者によるコメント
近代以後、人間は自然とは相反した存在として、人間中心主義的な自然の支配、自然の搾取を始めた。この破壊的な行為に対して、自然と一体的な人間の営みの例として、棚田の風景がある。棚田は人間の手で自然を改変しつくられる。しかし、棚田の制作の場は、豊かな生物多様性が育まれる場でもある。そこで生きる生物は、人間の稲作の営みに依存して生きており、人間も同様に多様な生き物が生きる棚田という環境に依存している。このようにして、人間は他種との平等な相互依存の関係性の中に生きることができる。このような場で、自然と人間を二分することは無意味である。私はあらゆる存在と依存しあって生きることが、真に豊かな暮らしであると考える。
この卒業制作では、自然の搾取ではなく、あらゆる存在と人間の営みが相互に依存的な関係性を結ぶことで成り立つ共同体の在り方を考えた。
担当教員によるコメント
人の寿命が100年としても、その100という数字を生きながら自覚することは少ないように思う。その前後も含めればなおさらだ。作者はその長い時間軸に自然観を重ね合わせ、人工的構築も自然の一部と考えた。いわゆる限界集落といわれる地区を題材に、壮大な環境の循環を提案している。生きることが変化することだとすれば、とても深い提案だと思う。
教授・米谷 ひろし
- 作品名あらゆる存在との共生をめざして
- 作家名神内 隆伍
- 作品情報模型
技法・素材:スチレンボード、バルサ材、角棒、針金
サイズ:配置模型=H300×W841×D594mm/各住居模型=W250×D250mm - 学科・専攻・コース
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