kannari
山内 明日香
作者によるコメント
生まれつきの極端に弱い視力と乱視は私の逃れようのないコンプレックスである。
乱視は多重に見え焦点が合わない特徴があり、強く発光するものは特にこの特徴が現れる。増殖した焦点のない光は容赦なく私の目に入ってくる。
意識的に「在るもの」を見ようとした時に「在るもの」に焦点を合わせようとする目の機能は私たちの無意識の中にあるはずである。しかし私の持つ乱視は無意識の中にあるはずの焦点を意識しても視界に反映されない。
絵画においても、鑑賞者は無意識に画面の何処かに焦点を見つける。乱視の視界を作品に展開することによって、無意識に合わせていた画面の中の焦点を意識の中に持ち込むことができるのではないかと考え、本作で試みた。
担当教員によるコメント
雷鳴轟く天空に走る閃光をモチーフに、その光跡をスピード感溢れる筆致と揺るぎないストロークで捉えた、幅4メートルを超す大画面。筆先は画面上を迷う事なく、何処までも駆け抜けている。そこにあるのは、途切れる事のない作者の息遣い。観る者はその気迫に圧倒されるに違いない。そうした緊張感以外でも、この作品の魅力を探す事が出来ると思う。例えば夏の夕暮れ、川面に乱舞する蛍の描く光の光跡をイメージしてみてはどうか。あるいは、暗闇に浮かぶネオン管を見つめた後の、瞼の裏に残った光の残像。山内の描く世界を通し、新たな物語が語られ始める。優れた作品はこのように、観る側の想像力を際限なく刺激してくれる。
教授・武田 州左
- 作品名kannari
- 作家名山内 明日香
- 作品情報技法・素材:岩絵具、パステル、カラースプレー、水干、吉祥麻紙
サイズ:H1820×W3640mm - 学科・専攻・コース
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