にょろばらぴちゃ機械

Maya Masuda

作者によるコメント

機械の内部(回路)/外部(造形)の両面から、近代機械に見られる特定の崇高(恒久性、自閉性)を脱臼することで、機械という存在におけるフェミニズム的転回を探る作品です。

本作は、腐食する流体や有機物を回路の内部に用いることで、腐食や酸化の過程を機械の内部に取り込んでいます。これにより、作品内の機械は流動的で不安定な、絶えず崩壊へと向かう存在となり、時間的/環境的な変化に晒されます。回路の一部は水中に溶け出すことで、鑑賞者を介して機械が現れたり消えたりを繰り返し、作家の手を離れて場との共生を始めます。作品の水分は壁に染み込み、いずれは美術館をも内部に取り込むかもしれません。

担当教員によるコメント

「機械」のイメージは、「強く」「速く」「固く」「大きい」。さらに「無機」的で、「閉鎖」的で、「反復」的で、「男性」的である。masuda はこうした機械のイメージを、有機的で、断片的で、流体的なものへと反転する。明確な境界を持たず、周囲の環境と混ざり合う。水分は蒸発し、重力や空気の動きによって変形する。しかしそれは、機械であるがゆえに、機能しなければならない。機械が機械であるためには、常に外部から手を差し伸べなければならない。秩序構造を自己組織する開放系のように、それは介入され続けることによって、何とか機械であり続ける。そこに因果や完成の概念はなく、維持することも、保存することすらままならない。しかしだからこそ、そんな一時的で、不安定で、不完全で、はかないものとの間に、人はいろいろなものを見立てる。不変的で、恒常的で、権威的な「作品」概念ほど、男性的なものはない。この反転された機械が指し示しているものを、多くの人と議論したくなる。

教授・久保田 晃弘

  • 作品名
    にょろばらぴちゃ機械
  • 作家名
    Maya Masuda
  • 作品情報
    インスタレーション
    技法・素材:タピオカ粉、電子部品、グリセリン、鉄、枝、フェルト等
    サイズ:H2000×W5000×D5000mm
  • 学科・専攻・コース