Parallax

中村 円香

作者によるコメント

「Parallax」とは2つの観測地点から奥行きのある対象物を見た時に生まれる「視差」のことである。2層になったプリントを左右の2つの目を使い見ることで、この現象が引き起こされる。前後感やそれぞれの画像の区別が曖昧になる感覚を味わえる視覚的作品になったと思う。

担当教員によるコメント

この半立体状の作品を目にしたときのクラクラする感覚は、記録写真ではなかなか伝わりにくいかもしれません。わずかな距離を置いて二層になっているふたつの顔写真がミックスされて見えるわけですが、むしろ混ざらないで反発し合っているようにも見えます。写真のざらついた生々しい現実感と、緻密に計算され仕上げられた無機的な作りがマッチして、顔という具象が、意味を剥奪され、抽象になってしまうような不思議さ。思わず前を何度も行ったり来たりしてしまう、「見る」ということを見る作品なのかもしれません。

教授・服部 一成