目に見える無関心な全て, 川

担当教員によるコメント

君が卒業制作に絵画というメディアを選択するとは考えてもいなかった。いや、いずれは上手くいっていたあの頃の、インスタレーション作品になるのではないかと思っていた。なぜならば、絵画に戻ろうとしてもがいていた時期の小品群には、正直言って解決の道筋があまりに遠く感じたから。それでも君は絵画から逃げ出すことはなかった。すると次第に大きな画面と対峙した君の身体の動きとストロークがシンクロし始めた。それだけではない、画面の向こう側に、あたかも君がいるような絵画空間が現れた。あちら側の君がこちら側の自分を挑発し、そして打ち返す。その過酷でスリリングなラリーの軌跡は見る側の心を揺さぶった。人を感動させることは、決して計算では出来ない。まさこの作品がそれを証明し、また、その時に立ち会えたことに心から感謝している。

教授・小泉 俊己