折り紙で鋳込む磁器

五十嵐 瞳

作者によるコメント

従来の石膏型による鋳込みは、安定して同じ形の磁器を作るのに適した技法ではありますが、生産工程で多くの時間や手間、コストがかかり、柔軟に形を変形させていくことには対応しきれていません。そこで、磁器づくりに紙の型を用いることを探求しました。紙の型は石膏型より安価で扱い易く、型を折る、切るなどの加工を加えるだけで、シンプルな形から多面体のような複雑な形状の磁器までつくることができます。紙型による磁器製造は、少量多品種、個別対応、多様性やオリジナリティを求める現代社会の流れにも合致できるものだと考えています。

担当教員によるコメント

焼き物は、約1万年の歴史があるプロダクトである。その長い歴史の中で、焼き物の成形方法は、手作りと型物の二種類しかない。そして、その技術は既に確立されていると思われてきた。作者は、紙を鋳込み型に利用することによって、手作りと型物の特徴を併せ持つ成形方法を創出した。同じ形を大量に成形することもできるが、型を折る、切るなどして変形させ、同じ型から異なる形を成形することもできる。現時点では、紙の手折り加工で型を作ることに焦点を絞っているため、最終形態の磁器のデザインに拡がりが足りないが、多種多様な紙の加工方法の研究や、鋳込み型専用の紙の開発などにも着手すれば、古代から続いてきた焼き物の生産システムに革新をもたらす可能性を秘めている。

教授・安次富 隆