欲望と絶望/アン倉

伊倉 大晴

作者によるコメント

この4年間、自分の中のテーマとして「面白いとは何か」が主軸としてあった。だがそれは同時に自分を縛り付ける言葉でもあった。手を替え品を替えかなり迷走もしたが、最終的には自分が面白いと感じたものをそのまま表現することが自分と作品にとって良いのだと気づいた。着飾った張りぼての面白さはやめにした。ありのままを表現した結果がこの「アン倉」へと繋がっている。ここには面白いと感じたものを詰め込んだ。だがこれらは主流では無いと感じたためアンダーグラウンドな伊倉の作品群として「アン倉」と名付けた。グロテスクな部分もあるが、これは私が目指しているポップで軽さを持ったグロさ「グロポップ」であり怖いだけでなくどこか笑えるような作品となっている。そして今回優秀作品としていただけたのは自分ひとりの力だけではなく多くの人の協力によってなし得たものであるため感謝しています。

担当教員によるコメント

メインピースの「欲望と絶望」では、画面の奥から手前に向かってクラッカーが弾けるようなこれまでの特徴的な飛び出す遠近法とは逆行している。骸骨や花束を持つ白スーツの男などそれぞれが静止する中、視線はシマウマの群走に追い立てられながらも深部へと血のしたたりを避けつつ忍び入る。アトリエを訪ねればいつもゴソゴソとこれもあれもと発明した玩具のように説明しながら見せてくれる。私は「ふうん」と心の底では「参って」いる。小さな作品にも彼は一つ一つ新しい名前を与えていて、それはまるで実験室での制作と似て化学変化を楽しんでいるようだ。悲劇も災難も陰から陽へと転化させる作品の魅力は底知れず、本人はそんなことにはお構いなしで、もうしばらくその深い場所(アンダーグラウンド)から光を放ち続けて欲しい。

教授・村瀬 恭子