欠片から

千島 あすか

作者によるコメント

月は地球の欠片だという説があります。月と地球は元々ひとつであり、隕石の衝突によって離れ離れになった地球の一部、 だという説です。 月の誕生には地球が不可欠であり、そうしてできた月に想いを寄せています。

37億年前に地球が誕生してから有象無象が生まれては消えてを繰り返し、最初の生命が誕生しました。それらはコピーをしながら増えましたがときに間違えることがあったようで、それにより様々な種類の生命に別れていきました。元々はひとつの細胞だったわけですから、植物も動物もまったくの別物ではないのです。我々が山へ登り木々を懐かしく思うのは、同じ海で生まれた命だったからではないでしょうか。

担当教員によるコメント

千島は様々な造形のジャンルを横断して作品を制作している。例えば布に描かれた絵画?を吊すために、木を組んで自然石を置きシュロ縄でくくる。描かれた布を支える柱は、一度材木(wood)になった角材を削りゆがませることにより、もう一度木(tree)に返還させる試みだろうか。
これは絵画や彫刻などのジャンルを曖昧にしつつ統合しようという試みであり、ひいては美術や芸術という名前が誕生する以前の、生きることと作ることや描くことが直接の関係にあった次元を取り戻すという大きな命題につながっている。画題にもそのことがよく現れており、人が自然の一部として扱われることで、かつて私たちが山川草木や花鳥風月と共にあったことを想起させることに成功している。

教授・菊地 武彦