powerful
丸地 大海
作者によるコメント
私としましては、人間より植物の方が強いような気がします。単純な強さではなく「生きる」という点で。今回の作品と関連ずけていうと、よく町を歩いているとたんぽぽがコンクリートの隙間から生えていたり、古い家屋の外壁をツタが建物全体を覆っていたりと生き抜いていくために植物は場所や手段を選びません。私たち人間はその時の感情であったり、「常識(共通認識)」の範疇で行動します。
話が少しそれますが、私が入学から大学2年生の頃まで、「美術」が嫌いな時期でした。それは小中学生では正解がないと教わってきた「美術」でしたが、「作品」として誰かに見てもらう時には少なからず見る人の見方考え方の正解があるとわかり、自分の良い=他人の良いではないを痛感したからです。それは当たり前のことで知っていたからこそ余計に自分の作りたいに自信がなくなりました。しかし大学2年の夏、友人が亡くなりました。その友人とやりたかったことはまだまだ沢山ありました。とても後悔しました。そこから自分の良いと思ったことをどんどんやって行こうと心の底から思えました。
生きたいという本能で生きる植物に憧れ、そして過去嫌いになった美術を自分なりの美術で貫き新たな自分に成長できたこと、大学生活最後の作品に後悔の残らないようにと思い、今回の作品を作りました。
担当教員によるコメント
コンクリートの渡り廊下に突き刺さった巨大な人参。
この作品は上下2分割で構成されており、渡り廊下を境に土へ潜って伸び続けている人参部分を見上げることが出来る。彫刻を構成する要素において垂直性というと、意味合いとしては上への方向性であるが、この作品は逆に下への引力の方向性。つまり自身の足元という絶対的な境界である地面より下の世界へアプローチした彫刻だと言える。
昨今、自然災害により否応なく知覚してしまった地中の世界や、絶対的な地面という境界。分断の象徴というべきコンクリートを一本のニンジンが物理法則を無視して貫いている様子は、さまざまな社会問題へアプローチ出来る可能性さえも見出すことが出来るクリティカルで、良い意味で気の抜けた作品となった。今後の活動が楽しみな作家だ。
准教授・木村 剛士
- 作品名powerful
- 作家名丸地 大海
- 素材・技法発泡スチロール、樹脂
- サイズH3500×W1100×D1100mm
- 学科・専攻・コース
- カテゴリー
- 担当教員