留学生レポート

留学生レポート 多摩美から海外へ 2019年度

都築 明日香

都築 明日香
都築 明日香

絵画学科 油画専攻

留学先 中央美術学院(中国)

私が北京を選択した理由には、私自身が持つルーツと関係があります。幼い頃の経験を、21歳の自分が持つ思考や言葉で、再構築したいという思いから選んだ「場」です。私の交換留学には、大きな枠組みとしてルーツの探索があり、目的を達成するための基盤として美術が必要でした。過去の自分を掘り下げる作業の傍らで、美術を通して出会う発見や学びを大切にし、一日一日を噛み締めながら過ごす事ができました。

専門分野について

制作においては、ロシア美術に由来する素描を抽象表現へ転換する課題、表現力の拡張を試みる目的で身体表現やサウンドデザインの授業への参加、中国美術史の授業では、書道レクチャーを通して水墨画の歴史を学び、日頃から水墨画専攻の作品を鑑賞するなど、学院ならではの環境に助けられ、自身の創作活動の幅を広げることができました。

その他(異文化交流など)

日々の生活では歴史観や教育観の差異で悩む事が多くありましたが、中国の時間の重なりとして認識し、文化として受け入れる事で、友人達と丁寧に接する事ができたと思います。苦難に直面しても、“明日も続く異国での生活をどの様に乗り切るか”を常に考え続けた事が、何よりも自分の糧になったと感じています。


橋場 みらん

橋場 みらん
橋場 みらん

絵画学科 油画専攻

留学先 国立高等装飾美術学校(フランス)

入学当初は教職を取り終えた卒業後に海外の大学へ留学しようと考えていましたが、2年生の夏にヨーロッパへ一人旅をしてから幅広く美術を知りたいという気持ちが強くなり在学中の交換留学を決意しました。

語学について

私は帰国子女ですが一人の海外生活は初めてだったので、新しい人との出会いや会話に緊張しました。フランスで様々な生き方をする色んな国の人々と共に生活するのは刺激的で楽しかったです。しかし、違うものを持つ人たちと関わる中で自分の未熟さと無知も実感しショックも受けました。それが制作への考え方の変化に繋がって行きました。

専門分野について

多摩美では油画専攻に在籍していましたが、留学先では彫刻・インスタレーションを作る専攻で美術を学びました。絵画とは違う次元の作品を作ることで絵画表現も自然と変化しました。現地でリサーチをする中で自分の制作テーマにも引っ掛かりを感じ、そこもだんだん変わりました。

その他(異文化交流など)

人との出会いや沢山の作品を見たことは人生と制作に影響した大切な記憶です。留学という挑戦をしたことは前に進む為の大きな一歩になりました。まだ知識と技量は足りないと実感できたので、留学経験を超えて行く挑戦をし生きることが目標です。


宮林 妃奈子

宮林 妃奈子
宮林 妃奈子

絵画学科 油画専攻

留学先 ベルリン芸術大学(ドイツ)

多摩美入学時に、漠然と交換留学することを決めていました。制作環境を変えること、文化や生活が異なる土地で自分の作品がどのように見られ、作品を通してどのようなコミュニケーションができるのか、実際に西洋に身を置いて絵を描きたいと思ったからです。また国や民族、宗教などで境界の折り合いをつけているのとは別に、絵には普遍的なコミュニケーションの力があると感じています。言語圏の異なる地域で自分の絵を発表することで、そして様々な芸術様式の中で、絵画という表現手段がもつ可能性を模索したいと思いました。

初めてのヨーロッパでの7ヶ月の生活、毎日の小さな出来事、会話、風景が新鮮な空気として身体に入り込んできました。ベルリン芸術大学(UDK)から1時間ほど離れた留学生向けのフラットシェアアパートで暮らしていました。金曜日のキッチンでは、夜な夜なパーティが始まることや、自国の料理を振る舞うことなど、学外での国際的な交流もあり、カルチャーショックを感じながらも、楽しいひとときを過ごすことができました。冬が寒いドイツでは、クリスマスマーケットのグリューワインでホッとし、またコロッケ屋さんで売り子のバイトをして、ドイツに住んでいる方々の暖かさにも触れました。週末には、ベルリン以外の街や、スイスやポルトガルなど様々な国に旅行に行きました。少しだけ、心細くなる一人旅では、いつも朝早くに町を散歩しました。どんなに暗いヨーロッパの冬の朝でも、仕事を始める人々のうごきや澄んだ朝の空気は、どこにいても朝があることに、気づかされ、勇気づけられました。

専門分野について

私が所属していたUDKのスタジオでは、2週間に1度クラスミーティングがありました。毎回100枚くらいのドローイングを発表し、教授にほんの数枚だけ選びとられ、シンプルな言葉をもらい、その言葉の意味と、選ばれたものの理由を考えながら制作していました。言葉が不自由な分、自分の目で見ること、相手とどのようにコミュニケーションをし、伝えることができるかということを大事にしていました。またUDKには、様々な工房があり、リトグラフやエッチング、製本、ヌードクロッキーなどのワークショップを履修し、初めて扱う素材や方法も、先生やチューターさんが丁寧に教えてくれました。アトリエの天井は高く、広々としていて、いつも真摯に自分の仕事と向き合うアトリエの友人たちの姿が印象的でした。

その他(異文化交流など)

2020年3月初旬 新型コロナウィルスがドイツでも広がりはじめ、1日毎に世界の変化が忙しなくなった頃、私は最寄りのSバーンの駅まで散歩していました。久しぶりにお日様がでて、心地良く、きっとまぬけな顔で歩いていたと思います。向かいからやってくる地元のおばあさんが、すれ違うときに、私の目を見て、笑顔で「Morgen!」と挨拶をしてくれました。私は、その出来事をすごく大事な瞬間に思いました。そんな一瞬の当たり前のことが、いま自分がここにいること、半年間ここで生活していたことを実感させてくれて、なにかをポンと飛び越えるような気持ちになりました。異国での生活を通して、「目に見えないコミュニケーション」というものが、人や国、場所に潜む境界線を超えてゆくものだと実感し、大切だと思うようになりました。同時に「絵画」は、言語を超える大切な体験を鑑賞者に提供し、境界を超えて新しい空間へと導くものだと強く感じました。

半年間という短い期間でしたが、人との繋がり、西欧の生活に根付いている芸術や文化、制作など、日本では簡単に通り過ぎてしまうような小さな事に躓くこともあり、不便さを感じつつも、それらの経験はとても新鮮で、人やモノたちの繋がりを肌で感じる事ができました。今後も、もっといろんな場所を歩いて、体験して、その土地で起きる出会いを大切に、絵を描いていきたいと思います。


片山 花香

片山 花香
片山 花香

生産デザイン学科 プロダクトデザイン専攻

留学先 ヨーテボリ大学(スウェーデン)

私は元々海外のデザインを学びたいという希望があり、一年生の頃から交換留学に挑戦してみたいと思っていました。協定校を調べていく中で、ヨーテボリ大学のデザインコースはグラフィックやプロダクトなどの領域ごとに分かれずに、総合的にデザインを学ぶという部分が魅力的だったことから目的地に選びました。

専門分野について

スウェーデンは環境配慮に力を入れている国のため、大学の授業でもSDGsや環境問題を取り扱うことが多く、グループでのディスカッションや外部講師の講義など、環境問題への考えを深める時間がほとんどでした。環境問題が主軸になったデザインを考えることは初めてのことだったので、新鮮な気持ちで取り組むことができました。

その他(異文化交流など)

学校外では、ストックホルムの家具の展示会に行く機会があり、北欧の家具メーカーの最新のデザインを目の前で見ることができました。家族連れで訪れている方も多く、一般の方のデザインに対しての関心の高さも伺うことができました。