企業の人事担当者・卒業生に聞く/エンターテインメント/ゲーム

高品質なサービスを支えるベースには、在学中に培った基礎力と経験がある

株式会社スクウェア・エニックス

『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』シリーズに代表される人気タイトルをはじめゲームの開発や運営を行うデジタルエンタテインメント事業、業務用ゲームの企画・開発を行うアミューズメント事業、漫画雑誌『月刊少年ガンガン』やゲーム攻略本などを手掛ける出版事業、フィギュアやキャラクターグッズなどの二次的著作物の企画・制作及びライセンス許諾を行うライツ・プロパティ等事業など、エンタテインメントに幅広く事業を展開する。
https://www.jp.square-enix.com/

2017年12月掲載


自由に挑戦できる環境が整っていて、
視野を広げ感性を養うには最適な場所。

齋藤 昌大さん
齋藤 昌大さん

2002年|油画卒

株式会社スクウェア・エニックス
アートディレクター

  • 本記事は2017年に取材したものです

現在は、スマートフォン用アプリ『ディアホライゾン』のアートディレクター(AD)を担当しています。ADとは、ゲームの設計からプロモーションに至るまでの、クリエイティブ全体を管理する仕事。今のチームは少人数の体制で、外部会社との協業でプロジェクトを進めています。入社当初デザイナーとして配属された部署は、百人超の大所帯でした。『キングダム ハーツ』『ファイナルファンタジー』といったビッグタイトルに関わる責任感や、多くのお客様の期待に応える達成感を学ばせてもらいましたが、より全体を管理するような経験を得たいと感じ、自ら希望して今のポジションに就くことができました。今の目標は、自分の関わるプロジェクトをビジネス的にも大きく発展させることです。世界中のお客様が当社に期待していること、それに応えられるようなゲームを作っていきたいですね。

確かな基礎力があれば応用が利く

僕は高校生の頃、将来は絵で職に就きたいという夢を持っていて、西洋ルネッサンス期の絵画への憧憬もあり、基礎的なデッザン力やものを見る目を養いたいという思いがありました。基礎があればどんな仕事にも応用が利くだろうという理由から、大学は美大かつ油画専攻に絞って受験しました。ゲーム業界への就職を意識したのは大学3年生の時です。子ども時代に夢中になったセガさんのメガドライブ用『ファンタシースターⅡ』のストーリー性と美しいグラフィックが強く印象に残っていて、こんな世界を自分も作りたいと思ったのです。油画専攻からなぜ?いきなりデジタルに行けるの?と思う方もいるかもしれません。でも、僕が好きなゲームのグラフィックスは、しっかりした陰影やハードな世界観が、実はすごく西洋絵画的なんです。それに、初めてMacを買いペンタブレットで絵を描き始めた時、「なんだ、デジタルでも結構いけるじゃないか」、と(笑)。油画で基礎力を養うという選択が、自分に合っていたんですね。なので、デジタルに対してそんなに不安を感じることはないと思います。僕が今、採用選考に際して学生の作品を見る時には、何よりも画力を見ます。当社が求めるものに対応できる力があるか。それに必要なのは、デッサン力や色味の再現力といった基礎力なのです。

多摩美時代に得た、モノづくりという試行錯誤に耐え繰り返すという経験は、諦めずに様々な角度からアプローチを試す今の姿勢と同じです。また、芸術祭の実行委員として教授たちの展覧会を企画し、「多摩美という組織の中で複数の学科や教職員を横断し、展覧会というアウトプットを達成する」という体験をしたのですが、これも、チームや外部の協力を得て作りあげるゲームの仕事と、まさにリンクします。

他では得られない多摩美の強みとは

ゲーム業界でデザイナーを目指すなら、まずしっかりした画力と、さらに「どうすればより洗練され、ビジネスとして結果を出せるところまでクオリティを高められるか」を考えて欲しいですね。もちろん、美大以外にも道はあります。でも、多摩美なら油画専攻でもCGがやりたければやれるなど、自由に挑戦できる環境が整っている。また、いろんな感性が集まっているので、視野を広め感性を養うには最適な場所です。僕が経験した芸術祭でのプロデュースの例もそうですが、学校生活においても、技術だけでなくビジネス面にも役立つ思考やマインドを養うチャンスにも恵まれています。そういう面が、多摩美の強みだと思います。

齋藤さんがアートディレクションを手掛けた、ロールプレイングゲーム『ディアホライゾン』画像。