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2. 今後の課題
 2-4. 時代を読む目、時代に向かって行動していく力
■ 冨 田

 いま中村先生から、ちょうど、まとめに代わるようなお話がありましたので、ここからは、会場の皆さんのご意見などうかがいながら進めていきたいと思います。まずは笹山さん、多摩美の陶の卒業生の仕事を長く継続的にご覧になっていらっしゃいますけれど、第三者の目から何かお話していただけますか。

【多摩美の陶作品・19】
  ■ 笹 山

 先ほど、授業が常識化している面があるので、それをどう打ち破るかというお話をされていたと思いますが、なかなかこれといった打開策を見出せないもどかしさを感じました。
 それに対して僕がいえることは何か、わかりませんけれども、卒業したあと自信をもって――前回、尹さんのいっていた「自信をもってやっていく」、とにかく、ものづくりとして世のなかを渡っていくぞという場合にベースとなる自信を、どうにかして身につけるということが必要で、それをどうするのかが、ポイントになるのでは、という気がしているんです。

 「何でもあり、というのは、キツイとかキツくない」とか、そういう話もありましたけど、僕は、キツイことを、とことんキツイ状況に追い詰めていくのもよいのではないかと・・・。自分でほんとに目の前が真っ暗になるような、奈落のそこに突き落とされるような気分になって、でも、そういうなかで何かを掴んでいくということが、自信をつけるきっかけになるんじゃないかなあという気がするので、とことんきつい思いをさせていくのも手だという気もしないでもないんです。

 まあ年をとってくると、新しい時代の感性がわからなくなってくる面も確かにあるけれども、そこはやはり、一つの戦いという感じですね。いかに自分の頭が古くても、俺はこう思うということを、講評でもビシビシいってあげればいいんじゃないか。逆にリアクションとして、若い人からバカにされるようなこともあると思いますけど、そのバトルをやっていくという気持ちもいいんじゃないかという気がしました。

 それから、いまの時代をどう認識するか、ということで、多摩美では、情報化時代、ポスト工業化時代ということを意識されているみたいですね。僕はじつは、前期だけですが「現代工芸論」という講義をしているんですが、先日、講義の最終日が参議院選挙の次の日だったので、僕はその結果も踏まえて、「これからは野党という存在が希薄になって、与党一点張りの時代になっていくから、ものづくりや表現には、やはりいろいろなプレッシャーがかかる時代になっていく。だから、そういうなかで自分がどう、ものをつくって生きのびていくかということを問われるようになるだろう」という話をしたんです。

 まあ、常套的ないい方をすると、例の「9.11以降」としての現代を、どう認識するかということも、表現者としては重要なことだと思います。学生の書いたレポートなどでも、いまは戦争のただ中で、命が脅かされているという状況を切実な感じで感じ取って、そういう時代において自分は何をつくっていくかといったことを書いた学生もいたんですね。ですから、そういったあたりについての現代の認識も必要じゃないかと・・・。とりあえず思いついたことをお話しました。

  ■ 中 村

 僕はそれ、両方のアプローチが必要だと思う。まず、社会の構造がどう変遷しているか、いま、超工業化社会からポスト工業化社会、情報化社会になったとき、アートはどういう形になるかということ。

 それから確かに――僕なんか終戦を体験している世代ですから、憲法9条の哲学、戦争しないということを世界に向かって主張する国が、20世紀越えたとき世界に一つくらい出てきてもよいのにという思いがあるわけですよね。でも、じゃあ日比谷にデモに行くのか。それも確かに一つの手法だとは思いますけど、僕からすれば、陶芸の世界だって振り返れば、人間国宝、芸術院会員という美術の世界になじまないはずの権威のヒエラルキーがあるわけですから、日比谷にデモを立つ以外の方法で、自分の得意な分野から社会を変えていくということも必要だと感じます。

 それゆえここでは、「現状への批判」「時代への批判意識」というテーマをあげているわけです。つまり、時代を読む目と、時代に対してどう行動していくかということの二本立てです。

  ■ 井 上

 ただ、実感があっての発想と、情報からだけでの発想と、違うと思うんです。けれど情報だけの発想からくる学生が多いんですね。カリキュラム運用上、学生が話したり、こちらがそれに対してコメントしたりと、言葉を介在させてやり取りしていくと、思考の部分が強調される傾向が強くなって、まずはそれがないとつくっちゃいけないと考えてしまう学生もいるんです。そこが難しい。

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