R・ローウィの鉛筆削り
Raymond Loewy
1934
042 フランスに生まれたレイモンド・ローウィ(1893〜1986)はパリで電気工学を学んだ後、1919年一ユーヨークに移住し、以後60年間、アメリカでデザイン活動を続けた。1930年代以降、ローウィは多くのスタッフを使い、自動車や冷蔵庫、機関車をはじめ、様々な大企業のパッケージングや商標などをデザインした。彼は臆面もなく大書壮語をはくという困った性格の人物であったが、デザイン性は優れており、世界一有名な工業デザイナーとなった。彼の写真は『タイム』誌や『デアーシュピーゲル』誌の表紙を飾った。何ヶ国語にも翻訳されたローウィの自叙伝『Never Leave Well Enough Alone』(1951年刊)は、体系的な研究という体裁をとらずに、過去を回想し、彼ならではの独断的な主張を展開している。ローウィの「スタイリング」への評価は年々下降している。しかし、大量生産されたデザインではなく、一度も生産されず、コピーされることもなかったため、一般には知られなかったこの鉛筆削りが、プロの工業7ザイナーたちの間ではっとに有名で、この人気が、皮肉にも現在の彼の名声を支えている。1934年に特許登録されたこの鉛筆削りは、第一次世界大戦後の空気力学の科学的研究がもたらした流線型の原理をデザイン化したものであり、1930年代の楽観主義をも象徴している。流線型は空気抵抗を最小限に抑えることがわかっているが、ここでは機能ではなく、形状だけがデザイン化されているといえよう。


【素材】金属部はクロムメッキ、プラスチック部品、象牙の可能性もある

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス