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G・プレツィオーソのポータブル・タイプライター「ヘルメス・ベイビー」
Giuseppe Prezioso
1935 |
パイヤール社が、1932年に商標登録された後も開発を続けたポータブルータイプライター「ヘルメス・ベイビー」は、1935年に販売を開始。オリベッティ社のフィギー二、ポリー二、ジャウィンスキーらが開発した「スタジオ42」が同じ1935年に発売されるまで、これが世界で唯一のポータブル・タイプライターであった。しかし、このスイス版の方がオリベッティよりも各構成部分に様々な工夫が凝らされていた。「ヘルメス・ベイビー」のケースは本体強度を高め、本体はリボンスプールなどを保護する構造になっている。省スペース化された構造はまさに携帯に最適であった。今はなぎスイスの精密機器メーカー、パイヤール社の熟練技術者であったジュゼッペープレツイオーソは合理的な目を持ったデザイナーであった。携帯タイプライターというコンセプトを追求しているうちに、大文字タイピングの画期的な新構造が生まれ、これが本体の省スペース化を実現した。シフトキーを押すとキャリッジが一段上がるので、タイピストはこのシフト操作だけで全ての大文字を打つことができるようになったのである。パイヤール社は「ヘルメス・ベイビー」と同時期に作られた、ラジオやレコードプレーヤー、カメラ、写真用機材といった製品にもすっきりしたデザインを採用していた。同社の商標であるギリシア神話の神ヘルメスの帽子やサンダルの翼は、旅行(携帯性)や貿易(新興ビジネス階級)を暗示し、名称の「ベイビー」は小型を意味している。プレツィオーソのタイプライターは、1920年代後半、スイス出身のフランスの建築家、ル・コルビュジエが「機械は芸術である」と主張して以後、考案された機械の芸術である。
【素材】ボディはラッカー塗装のスチール
100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス |
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