A・アアルトの花瓶「サボイ」「アアルト」
Alvar Aalto
1936
042 アルヴァ・アアルト(1898〜1976)はヘルシンキで建築を学び、ヨーロッパ中部、スカンジナビア、イタリアに旅した後、1923年ヘルシンキに建築事務所を構えた。彼は建築家、都市計画デザイナー、インテリア7ザイナーとして幅広く活動し、1927年からは様々な家具のデザインを手がけるようになった。その家具の大半はいまだに生産され続けている。アアルトの作品の中で特に素晴らしいのはガラス製品であり、中でも花瓶「アアルト」が傑出している。この花瓶は1936年のコンペに勝ち、1937年のパリ万国博フィンランド館に出展された。アアルトのコンペ出品タイトルは「イヌイット女性のレザー・パンツ」であった。様々な試行錯誤の後、吹きガラスの作品は木製の鋳型で成型されるようになる。1954年以降、工房が鉄製の鋳型を使うようになってからは、ガラスの表面はざらつきが消え滑らかになった。この花瓶は、アアルトが設計したヘルシンキのレストランで使われて以来、「サボイ」という商品名であったが、アアルトの家具の製作会社の幹部アルテックが名前を「アアルト」に変えた。この花瓶の形状はシンメトリックなガラス容器の伝統を無視するものであった。波打ったラインはすでにアアルトの建築にも現れており、1931年から1932年に発表された曲げ木椅子「パイミオ」の側面部は、この花瓶の曲線を予言している。これまでアアルトの波は、様々な人々によってその起源が探られてきた。フィンランド語の「aalto」には「波」という意味があるが、彼の「波」へのこだわりは生まれつきなのかもしれない。


【素材】吹きガラス

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス