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P・シュルムボームの「ケメックス」コーヒーメーカー
Peter Schlumbohm
1941 |
ドイツ、キールの裕福な家に生まれたぺ一ター・シュルムボーム(1896〜1962)は、1926年、ベルリンで物理化学博士号を取得した。彼は、アメリカに何度か旅行で訪れた後、1936年に移住し、特許法の恩恵を十分に受けた。彼の作品の中で最も成功したのは、1939年に発明、1941年に特許登録されたケメックス・コーヒーメーカーだった。この装置は、化学実験室ならどこにでもあるようなごくありふれた漏斗や三角フラスコを合体させたもので、上部に紙フィルターを入れて使うものだ。シュルムボームは戦時生産局の許可を得て、本体部分にコーニング・グラス社の耐熱ガラス(ハイレックス)を採用した。最初のモデルでは、上部を長方形の溝から上端まで外に広がる形にして、くびれ部分に木製またはコルク製の取っ手をつけた。次のモデルでは、溝と同じ幅で上端までつけられた注ぎ口が、紙フィルターに溜った蒸気を外に逃がす働きもしていた。最終的な溝の形は、現在のモデルのように丸みを帯びている。側面につけられた突起はコーヒーの適量位置を示している。製品は、シュルムボームの会社の女性従業員が最終の組立を行った。彼は自分で広告コピーを考え、支払いはすべて即金で済ませ、1日に1〜2時間だけ働いた。発売当初は、奇妙な形をしていたため、販売に自信が持てなかったバイヤーたちから敬遠されたが、1945年には年間売り上げ20万ドルを達成した。こうしてケメックス・コーヒーメーカーはシュルムボームに巨万の富をもたらした。
【素材】ホウケイ酸ガラス『ハイレックス』、木材、皮革、紙。写真は1940年代の製品。
100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス |
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