ユーティリティ・デザイン・チームのサイドチェア
Utility Design Team
1942
042 第二次世界大戦中に殺戮と破壊を受けたイギリスは、戦後も悲惨な状況に喘いでいた。政府主導で生活必需品生産計画を実施し、衣類、陶磁器、家具などの必需品を各家庭に支給した。木材不足が深刻化する中、爆撃により破壊された家具の需要が急増し、価格は高騰した。政府は緊急に必要とされる標準的家具の生産計画を発表し、政府支給品マーク「CC41」を新しい家具に表示することを義務付けた。これらの家具デザインの最終審査を担当したのは、家具デザイナー兼家具職人のゴードン・ラッセル(1892〜1980)だった。最初のシリーズはコツウォルド・コレクションと呼ばれた。コツウォルド(先史時代の巨石モニュメントのある地名)は、19世紀英国アーツ・アンド・クラフツ運動時に製作された椅子である。この名前を見ても、当時の主流であった功利主義が、必要に迫られて時代に逆行していたことがわかる。最初のシリーズの家具約30種類は、1943年初頭に配給所に届けられた。しかし、この新しい家具は新婚家庭か爆撃によって家具を破壊された家庭にのみ配布された。被害を受けなかった人々は、種類の限られた家具や中古品の中から選ぶしかなかった。必需品としての家具の外観を規定する法律は1948年に廃止されたが、価格を統制する法律はその後も存続した。生活必需品生産計画は、無税の家具の製作工場が2500社に達した1953年にその役目を終えた。


【素材】オーク材、布地にプラスチックを塗布した模造皮革「レキシン」

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス