I・ノグチのコーヒーテーブル
Isamu Noguchi
1944
042 デザインとファインアートの両分野で優れた手腕を発揮し、経済的に成功する芸術家は数少ない。イサム・ノグチ(1904〜88)は芸術家として駆け出しの頃は貧困に喘いでいた。1927年から1929年、彼はグッゲンハイム奨学金を得てパリに渡り、彫刻家C・ブランクーシの助手を2年務めた。1926年、彼は初の実用的オブジェ作品としてのプラスチック時計「メジャード・タイム」をデザインする。この暗示的作品が世に認められたのは、11年後の1937年のことである。アメリカの電気メーカー、ゼニス社は、ノグチがデザインした、親が離れた場所から子供の声を聞くことのできる帽子形のべ一クライド製インターホン「レイディオ・ナース」を製造している。ノグチは彫刻家として精力的に活動する傍ら、ニューヨーク近代美術館館長、A・C一グッドイヤー邸のために、初めてテーブルのデザインをした。彼は、インテリアデザイナー、T・ロブスジョン=ギビングズが、自由な形状の脚部の上にガラステーブルを置くという自分のデザインを盗んだことで大いに憤慨する。ノグチのテーブルシリーズの1つである、右の写真の作品は、1944年以降も大量生産されている。同一形状の脚部は、重なり合う部分が真鍮ピンで固定するようになっており、また脚部が分解できるので、メーカーは輸送費を軽減することができた。ノグチはこう述べている。「私はこれ以上単純化できないもの、小賢しい工夫を凝らしていないものを作りたかった」。その彫刻的な造形は、ノグチらによって展開される戦後の有機的デザインを予言したものとなっている。


【素材】塗装した木材、または染色したクルミ材、ガラス

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス