腕時計「スウォッチ」
1983
042 1970年代のスイスの時計産業は、そのマーケティング、デザイン、技術が流行違れとなっていたために、低賃金に支えられたアジアとの価格競争に押されていた。そこで、時計職人組合は生き残りを図るため、ニコラス・G・ハイエック(1925〜)に助力を求め、彼は調査によって、ユーザーは多少高価でもアジア製よりもスイス製を好むことを知った。しかし、競争力を持たせるには、精巧で、衝撃に強く、耐久性があり、防水機能を持ち、時間が正確でなければならない。さらにアジア製品の特徴であるデジタルではなく、アナログ式の、35ドルと安価な時計を作る必要があった。ハイエックは、この道のりは困難だとしながらも、銀行の後押しを受け、この組合を買収した。こうして若き技術者ジャック・ミューラーのチームが開発した、プラスチックを使ったスリムで安価な時計が誕生したのである。  まずは使用パーツが見直され、通常の時計に使われる151個から51個に省力化する。1981年にはプロトタイプが完成、1983年までに、最先端の製造技術と洗練されたデザイン、巧みなマーケティングによって、ハイエックの夢想家魂が、「スウォッチ」に見事に結実した。1984年からは、マックス・イムグリュスをはじめ、様々なデザイナーのモチーフが加わり、ファッションウォッチ市場を激変させるに至った。


【素材】 金属部品、プラスチック、ガラス

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス