M・グレイブスの「ケトル・ウィズ・バード」
Michael Graves
1985
042  建築家、マイケル・グレイブス(1934〜)は、1980年頃にはプロダクトデザインに多くの時間を割くようになった。80年代、グレイブスをはじめとする建築家たちが流行の最先端をいく、高価な製品を次々に発表する。中でもグレイブスのケトルは商業的に最も成功した製品の1つであろう。その目立った特徴である注ぎ口の鳥のモチーフには遊び心が見られ、ケトルの湯が沸騰すると音が鳴り出す仕組みになっている。(笛吹きケトルは、ニューヨークのキッチンウェアセールスマンがドイツを旅行中、ケトル会社を訪れた際に思いついたもので、1922年シカゴ全米家庭用品展示会に初出品された)。ワイヤーの取っ手部分には熱を遮る青いパッドが付けられている。実用的で、見た目にも美しいデザインであり、ケトルの底の面積が広いので湯が沸騰するのも早く、蓋口も広いので中が洗いやすい。  デザインを依頼したアレッシィ社は当初、75,000ドルのデザイン料は法外だと感じたが、発売以来150万個も売れたことを考えれば賢い選択であった。同社のもう1つのヒット商品であるフィリップ・スタルクのレモン校り器「ジューシー・サリフ」(p.192参照)は、デザイン料はグレイブスに比べ低いながらも、ケトル同様の売り上げを記録した。 いわゆるポストモダンと呼ばれるこのケトルは、シュガーボウル、クリーマー、トレイなど定番ティーセットの一部となっている。


【素材】 ステンレススチール(つや出し、後には黒色のシリコン樹脂でコート)、ポリアミド

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス