W・スタンフとD・チャドウィック共作のアームチェア「アーロン」
William Stumpf/Donald Chadwick
1992
042 ウィリアム・スタンフ(1936〜)はイリノイ、ウィスコンシン両州で、ドナルド・チャドウィック(1936〜)はカリフォルニア州で工業デザインを専攻した。  オフィス用システム家具に精通していたスタンフは、1970年、ハーマン・ミラー・ファニチャー社研究開発部門の副社長に就任した。スタンフとチャドウィックは共同で、時に他の者も加えてハーマン・ミラー社の家具開発に務めた後、デザイン提携を行った。スタンフには1966年にハーマン・ミラー社で制作したオフィスチェア「アーゴン」がある。これは一定の評価を得たが、「アーロン」の前奏的作品であった。  チャドウィックと共作した「アーロン」は技術的革新性と評価の両面で2人の他作品を凌いでいる。座席と背もたれ部分は、自動車シート用ポリエステル・エラストマー・メッシュによって作られ、座ったときに圧力で窪み、立席するともとに戻る。高さ、肘掛け、背もたれの角度は、単なる事務作業だけでなく様々な作業に応じて調整が可能である。さらに市販の3タイプであらゆる体型に適合し、座る人の体の傾きは、座席下部のユニークな形をしたサスペンション・システムによって調整される。デザイナーの審美眼は無視できないが、むしろ、この椅子がヒットした秘密はハーマン・ミラー社の広範な研究と市場調査への資本投入にあると思われる。「アーロン」はレーシングカー並みの高性能マシーンといえるのだから。


【素材】 ハイトレルポリマー、ポリエステル、ダイキャスト製強化ガラスポリエステル、アルミニウム

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス