それぞれの暮らし, drawing
大野 晶
担当教員によるコメント
大野晶の絵画やインスタレーション作品には、日用品やそれらの間をぬうように紐状のものが現れる。それは一見、私たちの社会生活におけるものともの、その背後にある人と人とを繋ぐ仮想としてのネットワーク的構造を表現したように見えるかもしれない。しかし、大野の作品はそのような性質なものとは違う。大野の作品の注目すべき点は日用品の細部にある。インスタレーション作品の制作行為の一つとして、木製の棚に複数の穴があけられ、その時に出た副産物としての木くずを棚の上に残したままにしている。それは作品全体のために部分を構成していくことを前提におかず、他から制限を受けない状態で今現在起きている現象を自律した存在として認めていく行為である。また紐も同じくして意志を持って変化しながら所々で自律した存在を主張している。それは全体のイメージを保持しながら、異なった複数の自己をそれぞれ自律させていく両義的な意識の持ち方である。大野は、SNS疲れに見て取れるようなひとつのイメージを保守するために接続過剰になってしまうような世界ではなく、意識を切断することで多様性を持った自己を産出させようとしているのではないか。
准教授・栗原 一成
- 作品名それぞれの暮らし, drawing
- 作家名大野 晶
- 作品情報『それぞれの暮らし』
技法・素材:油彩、キャンバス
寸法:H150×W110cm
『drawing』
技法・素材:ミクストメディア
寸法:H180×W200×D130cm - 学科・専攻・コース
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