点在する自分、そしてあるいは…
今回のTAMA VIVANT Ⅱ 2012 展は、6人の学生が、それぞれの感性で選んだ作品を集めたものです。私たちは、他の学生がどうしてその作品を選んだのかという理由を理解するために、幾度も話し合いを重ねました。しかし、何故その作品を選んだのか、あるいは、何故その作品でなければならなかったのかという理由を、言葉で言い表してお互いに伝え合うことに困難を感じました。
けれども、時間をかけてひとつひとつの作品をじっくりと鑑賞するうちに、作品を選んだ人が垣間見えるような気がしてきました。私たちは異なった眼差しで世界を見ていますが、そうであっても、自分とは別の視点の人間が選んだ作品を鑑賞し、選んだ理由を想うことができます。そのような時に生まれるやわらかな関係が、完全には理解し合う事のできない私たちにとって、大事なことのように思われます。なぜなら、人は生きる上で、必ず他者との関係を持つからです。
とはいえ、お互いあまりに遠く離れていては、深い関係は生まれません。様々な人が暮らしているなかで偶然、何故か近くに在った者たちが関係し合う。自然なかたちで生活していれば、関係せずにはいられないということかも知れません。したがって、ここに集まった作品の間にも、あたりまえに関係が生まれます。そこで生まれた関係がいったいどういうもので、何が見出せるのか、それを言葉で説明することは、私たちにはできません。
そこで、皆さんに、その関係性を認め、楽しんでいただく最も確実な方法は、実際にこの展覧会に足をのばしていただくことである、と考えます。その際、無理に作品の繋がりを探し出す必要はないでしょう。私たちは展示された作品から、特にどういったことを感じていただきたいという想いはありません。作品から何を見出すかという眼差しの差異によって、私たちは相互に、自らの内にない視点を補い合い、新たな、記号化されない関係を築くことができると考えています。
今回の展覧会を通して、そのような関係により生まれる多面的な視点が、皆さんによる新たな発見を促すことを期待します。また、その発見を、皆さんが新たな問いを見出す契機としていただければ幸いです。
企画室一同
多摩美術大学展
2012年9月22日(土)〜10月7日(日)
9:00~19:00(日曜、最終日は17:00 閉場)多摩美術大学八王子キャンパス内
絵画東棟ギャラリー
情報デザイン棟・芸術学棟ギャラリー
パルテノン多摩展
2012年11月24日(土)〜12月2日(日)
10:00~18:00(最終日は17:00 閉場)多摩市立複合文化施設パルテノン多摩特別展示室