ムカルナス:回教建築の鍾乳石状装飾研究|髙橋士郎
イスラーム建築で使われる持ち送り構造の装飾ムカルナスは、鍾乳石の丸天井を意味するアラビア語で、小さな窪みが層を成して繰り返し垂れ下がるイスラーム建築独特の装飾です。煉瓦、石、漆喰、木などで作られるムカルナスは、ドーム、穹隅(きゅうぐう)、アーチや天井の様式として使われています。10世紀中頃にイラン北西部で発展したムカルナスは、欧米でスタラクタイトやハニカムと呼ばれ、その独特の美しさが旅行者によって古くから語られていました。
多摩美術大学文様研究所では、主要研究員の一人髙橋士郎教授によって、ムカルナスを対象とした研究が行われていました。
髙橋氏は中東イランをはじめとする国々の現地調査(イスラム美術調査旅行、1975年)をはじめ、ムカルナスの造形がいかなるものかを明らかにしようとする取り組みを行い、様々なムカルナス天井伏図の作図、それらの天井伏図を系統別に分類する試みを経て、ムカルナスを大きく三種類の様式に分類して、それぞれの幾何学的な造形言語の系譜を明らかにする研究に取り組みました。
その研究成果は、日本デザイン学会口答発表(1976年)、朝日新聞「研究コラム」(1977年)、多摩美術大学研究紀要1号(1978年)、雑誌「数学セミナー」(1979年)、多摩美術大学研究紀要22号(2008年)、情報デザイン学科刊『創造性の宇宙』(工作舎、2008年)、さらに髙橋士郎氏のwebサイトなどで発表されています。
髙橋史郎教授は、「ムカルナス」の研究の他にも、「竹籠目」、「シンメトリ」に関する研究を行っています。